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レーザー [博物館]

レーザー

Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation

目次
1,コヒーレント光 2,レーザーの機構 3,レーザーの仲間


1,コヒーレント光


 レーザー兵器は「光」を武器に換えるものである。周知の通り、「光」は「電磁波」という波である。この電磁波の圧力によって対象物を構成する原子にエネルギーを与え、融解させたり蒸発させたりする。また、大気を燃焼させた時に発生する衝撃波(プラズマ爆風)も対象物への破壊力に一役買っている。
 レーザーは、多くの場合電力をゾイドコアから配線を引いて賄う。そのためエネルギー消費が高く、ゾイドのスタミナ切れを招く要因ともなる。反面、兵站の観点からは、稼働のためのエネルギー源が装薬でなく電力であるところから補給の便がよく、火力を持続して発揮できる利点がある。


 レーザー「光」は波であるが、ただし、自然界に通常存在する「光」とは違いがある。
 レーザーに用いられる光は、「コヒーレントな(可干渉性を持つ、という意味。つまり、干渉できる)」光である。「干渉(interference)」とは、二つ以上の波動が重なった時に相互作用によって「波」が強めあったり弱めあったりすることを指す。「干渉」が起こるには位相や波長が揃っている、即ち波が規則的な形をしている必要がある。(図1

  不規則な波では、波の振幅が重なり合った時にも結局規則的にならず、波動の相互作用も規則的に働かないためあまり意味がない。
 「波」の振幅には「山の部分」と「谷の部分」がある。波の位相が同一点で重なれば、山は山と出会い谷は谷と出会って互いを強め合い、振幅は大きくなる。逆に谷と山という正反対の位相が出会うと、波は打ち消しあう。これが「干渉」である。(図2


 例えば、同じ「波」である「音」に於いても「干渉」は存在するのだが、音の干渉によって起こる現象に「うなり(beat)」がある。「うなり」とは、僅かに振幅数の異なる二つの音波が重なり合った時に、波が互いを強めあい、また弱めあって、音波の振幅が周期的に増減する現象のことである。註1

図1 コヒーレントな波
wave.gif

図2 波の干渉

重なった波が強めあう時
beat1.gif

重なった波が弱めあう時
beat2.gif

 光における「波長」は、人間の目には「色」として映る。そのため「波長」の揃った可視光線域のレーザー光線は必ず単色の光条である。註2 光における「位相」は光の拡散に影響する。位相の揃わない光は拡散し易い。位相の揃えられた光であるレーザーは極めて収束度が高く、エネルギー密度の大きな光=強い電磁場を得る事ができる。


 レーザーは位相が揃っているために自然界の光に比べて遙かに指向性が高く、障害の無い限り直進する。そのため大気等の影響で乱反射しなければ人間の目に弾道(?)が捉えられることは無い(核反応で発生する「X線」を用いたレーザーは、ほとんどの分子を通り抜けるため、極めて直進性が高い)。ただ、火器になるほどに強力な出力を持つレーザーでは、レーザー軌道上の大気がイオン化する際に光や熱や音が発生する。このため、目に見え、音に聞こえてしまうのが実状である。よって、質量兵器とは違って反動は無いものの、隠匿性はさほど高くない。また霧等の天候条件や煙・ガスといった光を遮るものによって比較的容易に威力を落とされてしまうことも欠点となっている。註3
 なお、一般論として「レーザーは光であるため粒子ビームと違って鏡面装甲等によって容易に偏向されてしまう」というものがある。これは間違いではないが、武器として通用するだけの出力を持ったレーザーは、一般的な「光」とはまた少々違った性質を持つ。光条通過時に高エネルギーを与えられた大気が爆発し、先に述べた「プラズマ爆風」と呼ばれる衝撃波が発生するのである。鏡面装甲が、高出力レーザー砲の光条通過時に発生するプラズマ爆風に対しても有効な防御力を持っているとは限らない(宇宙空間の真空中では爆風は発生しないため、鏡面反射による偏向は有効だろう)。このため、レーザーに対してどれほどの効果を持つかは疑問である。
 実際、レーザーは地球人が開拓船グローバリー三世号に乗って惑星Ziにやってきて後ゾイドにも搭載されはしたものの、「強力な主武器」というよりは副次的な武装として扱われている。これには上記のような、「宇宙空間でこそ真価を発揮し得る武器」であるが故だった。


2,レーザーの機構


 自然界にはコヒーレントな光が存在することは非常に希である。ではレーザーはどのように発生させるのか
 レーザー(LASER)とは、「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(放射の誘導放出による光増幅)」の略で、この現象は地球人科学者アインシュタイン博士によって1917年に予言された。


 「誘導放出」とは何か。
 電子は、状態に応じて一定のエネルギー準位(レベル)にある。高いエネルギー準位にある電子は、低い準位に落ちる際、そのエネルギー差に相当する一定のエネルギーと波長を持った電磁波を発生する。これが「誘導放出の原理」である。レーザーの発生には、その名の通り「誘導放出の原理」が用いられる。
 まず放電や光の照射によって、電子に外からエネルギーを与えてやる。すると電子は高いエネルギー準位に変化(「励起」と呼ぶ)する。これにより、自然状態の分布とは逆に高エネルギー準位の電子が多くなり(反転分布)、励起した電子は低いエネルギー準位に戻ろうとする。この時、「誘導放出の原理」によって電子は電磁波を発生する。そうして放射された電磁波は、次は別の低いエネルギー準位にある電子に吸収されてこれを励起させる。すると、その電子がまた誘導放出を起こす。これを繰り返していくと、高いエネルギー準位から低いエネルギー準位への遷移が一定になってくる。このため、誘導放出によって発生する電磁波(光)の波長も揃い、特定の波長の光だけが増幅されてゆく。こうして光の波長が揃えられる。
 では位相を揃えるにはどうするか。
 上記の誘導放出の繰り返しを二枚の平行した鏡(共振器)の間で行う。励起した電子から放出された光はこの鏡の間を往復し、「干渉」を起こす。干渉により同じ位相の光は強められ、ずれているものはうち消されてしまう。これにより、位相も揃えられてゆく。


 こうして共振器の間で電子の誘導放出を繰り返すことをレーザー発振と呼び、取り出された光がレーザー光線である。
 理論的にどのような分子も励起と誘導放出を起こし得るが、レーザーの発振に用いられる素材は自らが発振する光に対して透明な分子でなければならず、限定される。しかし、「電子」には原子核の周りで一定の軌道を描いて回っている「束縛電子」と、原子に捕らえられていない「自由電子」があるのであるが、この自由電子を用いて発振すると原子・分子のエネルギー準位や透過性の問題から解放されるためにどのような波長の光領域でも発振が可能である。ただし、電子加速器や電子ビームを蛇行させる磁気アンデュレータなどが必要になるため、束縛電子を用いたレーザーに比べて大型化することは免れない。



3,レーザーの仲間


a)メーザー、熱線砲
 可視光線外(赤外線以下)の短波長電磁波であるマイクロウェーブを、レーザーの様なコヒーレントな波として発振するものを、メーザー(Microwave-ASER)と呼ぶ。レーザーに比べて煙や蒸気に影響を受けにくい特徴がある。生物が目標なら一瞬で体液が凝固・沸騰し、やがて焼けこげる。特殊偏光ガラスなどの有効な電磁波防御に護られていないコクピットに命中すれば、パイロットだけを殺すことになるだろう。ゾイドに対しては感覚器・或いは機器類のショートといった効果があり、また一部の体組織に作用すれば融解を招くこともある。


b)パルスレーザー
 共振器中で連続して光を発振し、周期的に迎える最大出力時にレーザーとして発射するもの。断続的に発射されるので、「レーザーマシンガン」とも呼ばれた。


c)レーザーブレード、ストライクレーザークロー、レーザーファング
 格闘武器にレーザー発振器を備え、インパクトの瞬間に光線として放出することで、打撃・斬撃に高エネルギーによる溶断効果を与える武装。
 なお、モルガに装備されたレーザーカッターは、もちろん格闘戦にも使用されたが、モルガの用法から工兵部隊で目覚ましい活躍を見せたという。地上、地下を問わず障害物を焼き切ったり、塹壕の要所において焼結による構造強化を行ったりと、大変重宝したという。
d)レーザーサーチライト等  レーザーはレーダーなどの観測機器にも用いられる。またミサイルの誘導指示器、小銃等携行火器の照準器、兵士への目眩ましなど用途は広い。 註釈: ※註1 この「うなり」の現象は、電波の受信にも応用される。発信された電波に対して受信側からも電波を出して「うなり」を生じさせ、その「うなり」を解析することで発信された電波を検出する方法で、ヘテロダイン受信と呼ばれる。 ※註2 余談になるが、「ドップラー効果を考慮しなければ」という条件がつく。ドップラー効果とは、波動源と観察者との相対的な運動によって、波長が伸び縮みして観測される現象のこと。音であれば、両者が相対的に接近中なら波長が縮むため通常よりも高い音が、両者が相対的に遠ざかっているなら波長が伸びるため通常よりも低い音が観測される。光についても似たようなことが起こり、波長が縮んでいれば通常より赤に近く見え、伸びていれば通常より青に近く見える。 地上では無視してよい程度だが。 ※註3 なお、惑星Ziの大気は地球以上に高度にイオン化した状態にあり、それは上空に向かうほど顕著である。特定の周波数域(可視光線など)の光学兵器は鏡面状に層分布した大気で反射し、放物線を描くことが多い。

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