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実弾火器 [博物館]

実弾火器



実弾火器



Solid Shell


目次


1,実弾火器とは



2,実弾を用いることの利点



3.実弾火器の分類



4,弾体の分類



1,実弾火器とは





 惑星Ziで使用される火器類は、エネルギー兵器(いわゆるレーザー類、プラズマ・中性子・放射線等を用いるビーム類)と実体弾兵器(固形弾体を用いる兵器)に分けられる(ミサイルや魚雷等も実体弾兵器に含まれるが、他項で述べる)。

 エネルギー兵器は、実体弾兵器に較べ高度な技術を要する。そのため一般に「エネルギー兵器の方が優れている」と考える風潮があるようだが、これは大きな間違いである。実体弾を扱う技術が停滞したままならいざ知らず、後発の技術に遅れをとるほど両者の優劣に差はないと考えて良い。否、むしろ実体弾武装の方がエネルギー兵器に較べて有利な場合の方が多いくらいである。であるからこそ、エネルギー兵器の実用化後も実体弾兵器は使われ続けている。

 特に理論上加速力に上限のないレールガン等のEML火器は、現在最も効果的な威力を発揮する武器である。が、これについても別に項目を設けてあるためそちらを参照されたい。この項目ではレールガン以外の火器について取り上げる。なお、実体弾火器には、固体火薬を用いる火薬式火砲以外にも、電熱化学砲(後述)も含む。

 余談であるが、グローバリーⅢ世号に乗り合わせた地球人達が、当初共和国にレーザー類、帝国にミサイル類と、異なる武器を供与していた事は歴史に記されたとおりである。しかしこれが何故かということに関して問われる機会は多くなかったのではなかろうか。実は、共和国に渡った地球人がグローバリーの乗組員(つまり宇宙船のミッションスペシャリスト達)であり、帝国に渡ったのが冒険商人であるという事実が大きく関わっている。宇宙空間では、実体弾兵器は弾頭を発射した際の反動が大きな問題となる。そのため、グローバリーⅢ世に搭載されていた武装の多くは光学兵器であり、共和国軍に当初供与されたのもレーザー砲であった。それに対し帝国軍に真っ先にミサイルが導入されたのは、冒険商人達が大気の存在する惑星に到達した後の商売(開拓者同士の争いでも予測したのだろうか)を睨み実体弾兵器を多量に持ち込んでいたことによる。惑星上の大気により、光学兵器はその威力を大きく減衰されてしまうためだ。

 なお、後に両国の科学的水準はほぼ同一になったものの、技術水準には差が生じた。当初地球人によって持ち込まれた技術水準は、共和国軍に明け渡された物の方が高かったのであるが、中央大陸戦争中頃から帝国軍によって追い抜かれている。





2,実弾を用いることの利点





 究極の実体弾兵器・レールガンは、加速力を増すほど(つまり威力を増すほど)弾体への特殊加工や精密機器の搭載等に制約を受ける。それとは逆に「加速力に限界のある」実体弾兵器群は、その速度や余剰スペースに見合った誘導制御装置等を装備することができ、更には敵味方識別信号を認識して航路上の味方機を回避して目標に到達する等の芸当までしてみせる。もちろん、昔ながらの「引力落下を計算しての長距離対地砲撃」も行われている。マシンガン等の有効射程距離が至近であるものは誘導する意味がないが、物によっては「ミサイルと殆ど変わらない」と評せるほどの誘導性能を持つのだ。

 威力の面でも実体弾は決してエネルギー系兵器に劣るものではない。むしろ、運動エネルギーで目標物を破壊することの方が熱エネルギーで溶融させることよりもずっと効率が良いのである。光学兵器の代表格・レーザーは、熱エネルギーを用いて対象を破壊するその基本的性質上、ある程度の照射時間を得る必要がある。CIWS(近接防御火器)や対ミサイル迎撃装置にレーザーが用いられることが少ないのはこうした事情からくるものである。その点、実体弾は命中と同時に運動エネルギーが破壊力に転じるため非常に効率が良い。

 また、低コストのローテクであるから、配備数も十分に整えることができるし、弾薬の補充に時間がかからず、機体のエネルギー消費に負担をかけない点も大きな利点だ。

 ただ欠点もある。運動エネルギーを上昇させることが実体弾兵器(HEAT弾等を除く)の威力を上昇させる最大の条件であるが、これには2つの方法がある。弾体の飛翔速度を上げることと、砲弾自体を重くする(つまり口径を大きくする)ことであるが、これを実行に移すと、2つのいずれであれ重量が増すのだ。弾丸を飛ばす爆発力(腔圧)に耐えられる砲身と安定性を失わないだけの構造、重い砲弾を発射するための充分な炸薬量・・・追加される条件は、重量の増加を免れ得ないものばかりである。逆に考えれば、従来技術の応用に過ぎない以上、コストさえかければ簡単に威力を高めることができるとも言える。





3,実弾火器の分類





▼発射方式による分類

火薬式銃砲
 火薬を用いた火器は、世界的に最も普及している。「火薬」が、最も簡便で効率良く物質に運動エネルギーを与える事が出来るためだ。惑星Ziにおける火薬は火族がもたらしたものとされており、火山帯に暮らす彼らが硫黄の化合物から作りだしたのが「最初の火薬」だったと云われている。
 弱点としては反動が極端に大きいこと、砲弾によって重量が増大すること、弾丸の初速が遅いことである。このため高速ゾイドには不向きなものとされる(航空ゾイド同士の戦闘においては、装甲の薄さから実弾機関砲などが有効である)。
噴進弾
 装薬を燃焼させる薬室が砲側ではなく弾頭側にあり、推進剤を燃焼させて後方に吹きだし、その反動で飛翔する。いわゆるロケットランチャー。発射ガスの圧力が大きくないこともあり、砲身は必ずしも必要ではないが、目標への照準や発射時の安定のために砲身をもったものが存在する。火薬式銃砲より火薬量を多くできるため、単発当たりの破壊力は高いものとなる。弱点としては、初速の低さ、飛翔体に推進材を積載することによる砲弾重量の増加がある。
電熱化学砲
Electro Thermal Chemical Gun。化学燃焼する液体発射薬を、高電圧放電により発生するプラズマでガス化し、その膨張圧力で弾丸を発射する。強燃性の装薬を用いなくてもよいことから、誘爆などの危険性は殆ど無い。レールガン等のEMLよりも少ない電力で発射可能である点も強みであろう。また発射圧力も非常に大きく、火薬式銃砲を凌駕する高初速を得る。




▼砲身構造による分類

ライフル砲
砲腔にライフリング(螺旋の溝)が刻まれているもの。弾頭を旋動させることによって安定性を得る(スピン安定)が、モンロー効果が減少してしまうためCE弾(後述)には不向き。
滑腔砲
ライフリングの無いもの。弾頭に備わったフィン(小翼)によって安定性を得る。風の影響をやや受けやすい。




▼直射・曲射分類

直射砲
初速に優れ、砲弾は目標に向かってほぼ直進する。砲弾の自己変形等の方法による誘導も可能であるが、砲弾の安定性・速度を損なうためあまり意味がない。接近戦闘で用いられるのは直射砲である。
曲射砲
遠距離の射撃目標地点に対して放物弾道で低速弾を打ち出す。第1宇宙速度に達しない砲弾では重力に引かれてやがて地に落ちるのであるが、これを遠距離射撃に利用して砲弾の飛距離を伸展するのがこの方式である。弾丸の初速が速いものから、加農砲、榴弾砲、迫撃砲(臼砲)と分けられる。当然放物線は初速が速いほど低延になる。




▼対空砲について



射界が広く照準が容易で、高初速且つ発射速度も高いことが条件となる対空兵器。弾幕を張って航空機を迎撃する。迎撃レーザーや迎撃ミサイルの発達により姿を消しつつあったが、誘導砲弾技術が取り入れられたことによって歯止めがかかった。







4,弾体の分類





 実弾兵器の弾丸は、大きく4つのパーツから成る。






1)弾頭

2)発射薬

3)薬莢

4)雷管





 ここでは、砲熕兵器の性質を最も大きく変化させる弾頭について取り上げ、分類してみよう。





●運動エネルギー(KE)弾

徹甲弾
(Armour Piercing)
:砲弾の持つ運動エネルギーを直接破壊力に換え、装甲を変形・貫徹することを目標としたもの。装甲との衝突時に変形しないよう、硬度・引っ張り強度共に高い素材が用いられる。砲弾後部に少量の炸薬を備えるタイプもあり、装甲貫徹後破裂して内部に被害を与える。こうしたものは、特に徹甲榴弾と呼ばれることもある。
被帽徹甲弾
(Armour Piercing Capped)
:徹甲弾の弾頭に軟鉄の被帽を被せ、命中時の応力集中による弾芯破損や装甲傾斜による滑りを軽減したもの。
風帽付徹甲弾
(Armour Piercing Ballistic Capped)

:空気抵抗を減らす風帽をつけたもの。
高速徹甲弾
(High Velocity Armour Piercing)

:飛翔中の安定性を保ちながら貫徹力の増大を図るため、軽量で軟質の外殻の内側に、径が小さく比重と高度の高い芯を入れた砲弾。外殻は命中時に潰れ、弾芯のみが装甲を破る。全体を弾芯と同一の材料で作るよりも砲弾が軽くなるため、より高速を達成できる。
離脱装弾筒徹甲弾
(Armour Piercing Discarding Sabot)

:発射後、径の小さな硬質弾芯を包む装弾筒が飛散、弾芯のみが装甲に突き刺さる。
散弾
(Canister)

:装弾筒内に無数の弾子を備え、砲口を出ると同時に小弾子が飛散する。1つ1つの弾体が小さく、また運動エネルギーのベクトルが一定でないため、近距離でのみ有効。
榴散弾
(Shrapnel)

:信管を備えた散弾で、発射後すぐではなく目標点に到達した時点で破裂、弾子を一定の散布角にばらまく。
液体金属弾頭
(Quicksilver)

:比重が大きく且つ柔らかい液体金属を弾頭に充填したもの。命中時の衝撃で飛散するため、対象内部を木っ端微塵に粉砕する。ただし、装甲貫徹力はそれほどないので対人兵器でしか用いられない。
対装甲探知破壊弾
(Search And Destroy ARMor)

:砲弾内に収容した子弾(爆発成形型貫徹体、EFP)を目標上空でばらまく。子弾は円盤形だが、裏面の爆薬の力で装甲貫徹体型へと自己鍛造する。ミサイルに搭載するのが主だが、砲弾にも採用されている。




●化学エネルギー(CE)弾

榴弾
(High Exprosive)

:中空の砲弾内に炸薬を充填した構造。装薬で発射した後、着発/近接/遅延/時限信管で炸裂させる。爆風及び砲弾外殻の破片効果による殺傷・破壊が目的。
成形炸薬弾、対装甲榴弾
(High Exprosive Anti Tank)

:ホローチャージ弾とも。モンロー効果(註1・ノイマン効果(註2を利用して、命中と同時に極めて高温のジェット噴流を生じ、この力によって装甲板を破壊する。同時に機体内部には数千度のガスと溶けた金属が流れ込むことになり、乗員を死傷させたり、燃料・弾薬等の可燃性物質に引火させたり、可動構造部分を歪曲させたりと副次的効果も生む。モンロー効果による破壊は砲弾の速度とは無関係であるため、低速の砲弾でも破壊力を増大させることができる。
粘着榴弾
(High Exprosive Squash)

:信管が砲弾底部にあるため、命中すると信管が作動するまでに炸薬の詰まった砲弾が潰れて装甲に粘着する。このため爆発の衝撃波は装甲内部の広範囲に渡る。炸薬量を増すほどに威力が高まる。
集束榴弾
(Cluster High Exprosive)

:砲弾内に小型の爆弾を収容し、これをばらまく単純なもの。所謂多弾頭ロケット弾を砲熕兵器で飛ばす。子弾が誘導装置を備えたミニミサイルである場合もあり、そうした砲弾はWASPと呼ばれる。




●特殊砲弾

発煙弾
(Smoke)

:発煙剤を仕込んだもの。敵からの視覚的隠匿のために用いる。レーダー撹乱物質等が混合されている場合も多い。
照明弾
(Flare)

:発光剤を仕込んだもの。閃光弾・曳光弾があるが、普通照明弾と言えば曳光弾のこと。飛翔しながら一定時間周囲を照らす。閃光弾は主に鎮圧用の目眩まし。
ネット弾
(Web)

:錘の付いたネットが込められていて、砲口から射出されると同時に展開。近接する敵を捕らえる。
粘着弾
(Adhesive)

:プラスチック製の外殻にパテ状の粘着剤が充填されている。捕縛、緊急補修など、用途は意外と広い。
神経弾
(Anesthetic)

:注射器が内臓されていて、命中と同時に麻酔薬等を皮下注射する。
催涙弾
(Tear Gas)

:刺激剤・催涙剤を充填した砲弾。多くは信管式で、高圧ガスによりこれらを吹き出す。催涙・呼吸困難、物によっては炎症効果も持つ。
ゴム弾
(Gum Bullet)

:対人訓練及び暴徒鎮圧用。
焼夷弾
(Incendiary)

:粘化剤を混合した燃料に引火させることにより火炎を生む。燃料は広く飛散するため、広範囲への攻撃が可能である。

 なお、砲弾には誘導装置の有無で分類する方法もある。誘導装置の備わったものはスマート(頭のいい)砲弾と呼ばれ、高価である。長射程砲で比較的低速な砲ほど取り付けやすい。レーザー誘導によるアクティブセンシングは、命中までの目標へのレーザー照射が必要で、危険が大きい。そのためセンサー搭載で自己誘導できるファイア・アンド・フォーゲット方式が主流となっている。

 また、長さの違い(装薬量)や直径(口径)によっても細分化されるのであるが、提示すべき資料が膨大になるため割愛する。





註釈:


※註1:モンロー効果・・・1880年代、アメリカ合衆国のモンロー博士が発見した。「火薬の爆発ガスによる熱エネルギーが鉄板を貫通する」現象を元に実験を重ねた結果、炸薬の前端部を凹状にすると、火薬の燃焼ガスが凹底中央部に集中し高速噴流となって噴出することが判明。





※註2:ノイマン効果・・・1920年代、ドイツのノイマンによる。弾頭内の炸薬に円錐形(漏斗状)のくぼみをつけることでモンロー効果が最大になること、また漏斗状の部分に金属の内張りをすると、メタルジェットによって破壊力が増すことを発見。



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