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カーリー・クラウツの証言 [博物館]

映像資料3826番
ZAC〇〇年〇月〇日放送
大陸統一テレビ
「グラム・ジー・ゲインスのトークショー」

ナレーション
『ゼネバス帝国最強のゾイド乗りと聞いて、君は誰を思い浮かべるだろうか。
トップハンター、トビー・ダンカン?
それとも、謎多きスパイコマンド・エコー?
確かに彼らは強かった。傑出したゾイド乗りであることは疑うべくもない。

しかし彼らは、「最強」ではなかった。
「そんなこと、わからないじゃないか」と、君は声を荒げるかもしれない。
だが、撃破数や、有名な作戦に参加していたか否かでゾイド乗りの「強さ」を表せるものだろうか。
一定の目安にはなるだろう。だが、指揮の良し悪し、作戦行動の良し悪しに多分に影響されるようなデータでは、ゾイド乗りとして最強か否かを見定めることはできない。「そんなこと、わからないじゃないか」とは、君にも当てはまる事なのだ。

しかし実のところ、最強のゾイド乗りは別に存在した。
ゼネバス帝国が「最強」の名を冠すべく育て上げたゾイドライダー。
コードネーム「白い巨峰(ヴァイスベルク)」。共和国でもそのまま「ホワイトマウンテン」と呼ばれ、白いアイアンコングを駆って、第二次開発競争直中の共和国軍を大いに苦しめた。
カーリー・クラウツ。
本名、エルマ・カヴォーロ。
そう、このうら若き女性パイロットこそが、かつて名を馳せた、ゼネバス帝国最強のゾイド乗りなのであるーーー。』

ーーこんにちは、エルマ。今日はインタビューに応じてくれてありがとう。よろしく。
「こちらこそ、よろしく。皆さん、こんにちは。」エルマは観客に向けて、屈託ない笑顔で挨拶した。
ーーこんな可愛らしい女性が、帝国最強パイロットだなんて信じられますか皆さん。
 客席から賛意の拍手が起こる。
「私なんて、本当は、どこにでもいる村の娘だったんですよ。クラウツって偽名だって、ねえ、おかしいでしょ」そう言って彼女は笑う。観客からも起こる笑い。(※クラウツ=キャベツの意)
ーーもともと、ゾイド乗りではなかったの?
「ゾイドに乗せてもらったのは、そうね、10代になってかしら。帝国軍事研究教導団からスカウトを受けたわ」
ーーそれはすごい!何がきっかけだったの?
「トラクターゾイドに乗って農作業をしていたんだけど、村の偉い人から紹介があったみたいなんです。」
『当時ゼネバス帝国戦闘技術研究所では、優秀なゾイド乗りの技術を研究するという名目のスカウトがごく当たり前に行われていた。その立場はパイロットの域を超えて行われた。一般のライダーから農作業ライダー迄、手当たり次第である。彼らが研究していたのは、ゾイドとの協調。ゾイドの意志を押し殺すと誹謗されていた帝国戦技研において、これに反する研究が行われていたのである』
「わたしが得意だったのは、ゾイドの正確な操作といったらいいのかしら。畑の畝を作るにしても技術が必要とされていたけど、わたしはそれが初めての時からなぜか上手にできたの」
『熟練の技術に勝る若い才能。戦技研はこうした若者を次々とスカウトし、戦闘技術研究に重用していった。特に彼女の場合、後に伝説となる偉業を達し得ることになる。』
ーー戦技研ではどんなことを?
「アイアンコングを担当していました」
会場がどよめく。
「シルバーコングのマニピュレータ操作に自信があったの。それを信用してもらえたみたい」
『彼女の繰り出す拳は正確に敵を捕らえ、彼女に操作されたゾイドは如何なる攻撃も回避したという』
『もちろん、それは天性の才能のみによるものではなかった』
「戦技研に集められた者同士で指導し合うような感じ。他の人のいいところを、教え合うのよ」
『それだけではなかった。戦技研のエースパイロット養成プログラムに所属する者たちにはコードネームが与えられ、共和国に敢えて所在を漏らしていた。最強のパイロットと当時最高のゾイド、それを調査することによって明るみに出る凄まじい戦力。これを喧伝するところまでが戦技研の思惑だった。戦技研が構築した内外に知られるべき戦闘のプロを育成するシステム。それが類まれなるエースパイロットを生み出したのである』
「わたしはホワイトマウンテンとして育てられました。最強のパイロットを育成するための教育課程の中にあったのです」
ーーこれらのプログラムが後のトップハンター育成に一役買ったとか?
「わたしはそこまで軍にいませんでしたが、同じプログラムをこなしていた仲間たちは、トップハンターの教官になった者もいたときいていますよ」
『しかもそれだけではなかった。彼らエースパイロットの操縦技術がゾイドの操縦系統にフィードバックされたのだ。その最も有名な1つが、ゼネバス皇帝の宮殿を守った無人のブロンズアイアンコングだったという事実。強力な帝国ゾイドの操縦性は、このような戦闘教育プログラムの影響を受けて改善されていったのだ』
ーー危険な仕事も多かったのでは?
「そう思われるかもしれませんが、おどろくほど安全でした。それは言い過ぎかな?自分たちの力量以下の任務が多かったと記憶しています。」
ーーそれはあなたが強かったっていうことですね。
スタジオを包む笑い。
「そうしてパイロットのネームバリューを守ろうとしたのもあるのかもしれません。また、当時の共和国ゾイドと帝国ゾイドの性能差が特に大きかったのもあると思います。」
ーーアイアンコングショックですね、
「アイアンコングの登場や新型重装甲帝国ゾイドの登場は、事実共和国に大きな衝撃をもたらした。改造ゾイドを多数生み出し、ゴジュラスマーク2をはじめとする急造の新型ゾイドを多数生み出したのである。それはもちろん大成功も生み出すことにはなったがー」
ーーそうそう、あなたの乗機「ホワイトマウンテン」は「カーリー」の乗るコングとして有名になったわけですが、「クラウツ」はともかく、この「カーリー」の由来はどこから?
「上官は『破壊の女神だ』とか『ワルキューレの一人の名前をもじったのだ』とか仰ってましたけど、実は幼馴染がつけてくれた名前なんです」
ーーほう?
「巻き髪の(カーリーヘア)、だそうでして」
ーー思ったより可愛らしい由来だったのですね。今日はありがとうございました。皆さま、英雄カーリーに拍手を。
拍手に包まれる会場。
以上、記録映像終了。
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