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惑星Zi史概説:2,部族 [付属図書館]

2,部族


 惑星Zi上に存在が確認されている「部族」は、文化的な特徴を共有する「民族」以上に、血のつながりの濃いものである。「部族」は先述の通り、複数の「胞族」から成る血縁・地縁的集団であるが、細かなものを辿っても「50以上の部族が存在した」とされる程度である。繰り返すが、星全体で50である。となれば、一つ一つの部族集団は巨大であり、血縁と言っても、「親戚一同」程度の結びつきではない事が伺い知れるだろう。

これらは淘汰され,吸収されて現在に至るまでに数を減らしてきた。ここで紹介するのは、現在でも数が多く、有力で、複数の国家に跨って居住している者達である。これら代表的なものだけでも、生活圏と生活様式が部族の特徴を決定することがよくわかる。





風族


身体的特徴:肌は薄緑、髪は黒、目は緑色とされる。

衣装的特徴:無地又は伝統的な模様を織り込んだ毛織物が伝統衣装。

食文化的特徴:広い領域を持ち、新鮮で多種多様な食物を手に入れることができたため、味付けはシンプルなものが多い。斜面を利用した果樹園で育てた果実の種から作る油と、麦酒を好む。

建築的特徴:領有する採石場から様々な岩石を利用。

宗教的特徴:風雷神を主神とする多神教。


古くは高地に住み、風車を利用して牧畜などで生計をたてた人々から生まれた。ゾイドを狩る「ハンター」や、ゾイドを駆る「ライダー」の先駆者と見なされ、その証拠に広大且つ独占的に利用できるゾイド狩りの縄張り「メトロゲージ」を持っていた。

地殻変動が安定化すると、全部族中随一と言われるその強大な軍事力を背景に、中央大陸北東部から平地(生産活動適地)を奪う戦争に次々勝利し、草原などに生活圏を拡大して広大な農地と居住地を得ることができた。彼らが土地を拡大できた理由として、他地域に住む者達よりも地理的条件が優位にあったこと(高原・高地の戦術的優位)、岩山等の建築資材が豊富で、堅固な石造りの建造物を建てて要塞化できたこと、多くの水源を確保しており、他部族との交渉において優位であったこと、飼育によって多数のゾイドを保有していたことが挙げられる。当時ゾイドは、現代よりも高価な労働力であった。中央大陸東側において、ゾイドを多く占有できた風族は、惑星Ziにおいて最も裕福な部族と言えた。

早くから富を得て安定した生活を送ったため、部族全体として性格は穏和であり、平和と人権を守ることが大切だと考える者が多い。だが、自分達の住む土地を「ハイランド(高みの地)」と呼ぶ自尊心も持ち合わせており、彼らの言う平和とは、裕福な風族中心の社会秩序を維持すること、彼らの言う人権とは、風族の中で通用する掟を基準にした人権であった。彼らが共和制を欲したのは、自分たちの自由を独占するためであり、「持たざる者」に渡さないためであった。互いの自由を尊重するのは、干渉によって制約が生じるのを避けるためであり、胞族的結束は弱いと言える。

そのため、歴史上、他部族からは高圧的に映り反感を買うことが多く、他部族は風族と交流することを避けたがった。有史以前から他部族との交流が少ないのは、そのためである。




地底族


身体的特徴:肌と目は赤茶。髪はオレンジとされる。

衣装的特徴:乾燥地で育つ長毛木綿で作る質素な衣装と皮革が伝統的。

食文化的特徴:狭い領域しか領有できず、略奪によって食いつないできた歴史から、発酵食や干物など、長期保存を想定した料理が伝統的。また、揚げ物や炒め物など油を利用した調理方法より、煮炊きといった水を活用した調理が多い。油の原料を生産できない代わりに、井戸掘りで地下水は容易に手に入ったため。

建築的特徴:大理石などの石灰岩、コンクリート、漆喰、煉瓦を多用。奴隷時代に他部族から様々な建築技術を取り入れた。

宗教的特徴:元は大地神を信仰する多神教であったが、後に一神教へと変化。


他部族に比べて体格が大きく、肉体的・身体能力的には最も優秀であった。これは、古来から肉体労働や徒歩兵役を生業とする者が多かったことで、そうした特質を持った者だけが淘汰されずに生き残ったためだと考えられている。

しかし、それは(強靱な躰とは裏腹に)貧しく、階級の低い者達が大多数を占めることを意味する。なぜなら、戦士として優秀になったのは、多くの者が生産活動を生業にできなかったこと、土地に恵まれなかったことに起因するからである。時に上級市民の配下として、時に奴隷として、市民権を持つ者に寄生して生きるか、市民権とは無縁の辺境に住むかのどちらかしか選択肢がなかった、ということである。彼らの選民的思想の根源はここにあると言える。

前者は都市域での兵士や剣闘・労働奴隷、後者は市域外での山賊・蛮族のような暮らしを強いられた。彼らは土地所有を認められていなかったために、洞窟やクレバス等の市域から離れた狭い土地(他部族が見向きもしないような)で少人数共同体による原始的生活を営んでいた。部族単位での集住はなかなかできず、数少ない地底族国家の政治的中央から離散していた。このため政治権力的弱者の割合が最も多かったと考えられる。反面、氏族や胞族同士の結びつきは全部族の中で最も強固であり、彼らにとって互助は決して破ることのない鉄の掟であった。地底族は、この互助精神により一つの部族として生存することができたと言われる。

惑星Ziの地殻変動鎮静化及び文明化以後は、洞窟生活で培われた石材加工や鉱山採掘の技術等を活かして職人となるものが増える。中央山脈の希少金属を産出する鉱山からの収入で莫大な財産を得る者もあった。また、風族の所有する採石場、建築現場での労働経験も、彼らの技術に多大な影響を与えた。しかし土地を持たない者が多かったために、総体的にはやはり貧困であった。




海族


身体的特徴:肌は薄青、髪は黒、目は青色とされる。

衣装的特徴:河口近くの低地で採れる麻織物の伝統衣装。鮮やかで細密な染色が特徴。

食文化的特徴:主食は低湿地で採れる水稲など。海産物中心の食文化。芋から作る酒を飲む。

建築的特徴:造船技術に裏打ちされた建築技術。主に木材や土で家を建てる。錆による劣化を防ぐため、釘などを極力使わず材木を継ぐ優れた加工技術が発達。

宗教的特徴:海洋神を主神とする多神教。


海や湖などの水辺で、漁撈採集生活を営んだ人々(南方系)と、海賊船を駆って沿岸からの略奪を行ってきた人々(北方系)を祖先に持つ。中心となったのは南方系で、北方系海族に拠点を提供することで友好関係を結び、やがて同質化した。航海術に優れ、主な生産手段は祖先と同じ漁業であったが、地殻変動終息までは遠くの島や大陸間の移動はほとんどできなかったとされている。地殻変動によって低地の河口が頻繁に場所を変えるため、彼らは海岸の土地を広く防衛しなければならなかったためである。半面、沿岸を伝っての移動・植民は積極的に行っており、また他部族との交流を最も盛んに行っていた部族であった。地殻変動が収まってからは、船舶による遠方との交易に重点を置き、商業を中心に部族を栄えさせた。部族間の戦争においては、「海族は、勝てないまでも負けることもない」「海族は、土地を取られてもすぐに奪い返す」と評され、安定した勢力を保有し続けた。

海族が、中庸で、公正公平を旨とする部族となったのは、交易を通して、多様な法や慣習に触れるうちに相対的な物の考え方を身につけたためだと言われる。それは一面では事実だが、商人として何枚もの舌を使い分け、どの部族からも憎まれすぎることなく、戦乱を渡り歩いたともいえる。

このため高度な文化を発達させることができ、科学者となったり、他部族の若者に教師として学問を教えることで生計をたてた者も多い。名だたる学者の多くが海族出身者で占められ、惑星Ziの民主化・文明化に大きな功績を残した部族であるが、一部の歴史家は、彼らの弁論術が幾つもの戦争を激化させたと評する。




神族


身体的特徴:肌は白、髪と目は銀色とされる。

衣装的特徴:長いマント、大きなフードとマスク。

食文化的特徴:不明。固有の食文化を持たない?

建築的特徴:本拠地とされる中央大陸北部には、巨大な石造りの神殿がある。

宗教的特徴:信仰自体明らかでないが、一神教らしい。


高次の存在=神との交信能力をもつと言われたり、予言の力を持つと言われたり、薬学・医学に長け癒しの超能力を持つと言われたりする、謎多き神秘的な少数部族で、古来よりその力を欲した権力者などの下に身を寄せたため定まった土地を持たない。しかし神族であるというだけで特権階級に生まれたも同然であり、貧しい暮らしには縁遠い部族である。ただし、歴史の表舞台に立つことを異様に嫌うため、書物などにも殆ど登場しない。そのため、「大昔に宇宙から来た」などとも噂される。

中央大陸北部氷河地帯、中央山脈の地下にあるとされる、高温高圧の地下空洞から、神獣ゴジュラスを連れ出して使役することができた唯一の部族。ヘリック共和国が、ゾイドゴジュラスを保有できたのは、神族の力添えあればこそだった。




砂族


身体的特徴:肌は薄茶、髪は白、目は黒とされる。

衣装的特徴:放熱効果の高い黒い木綿の衣服が伝統的。過去には、金糸・銀糸をとりどりに編み込んだ伝統衣装があった。

食文化的特徴:麦を主食とし、水がなくても醸造できる果実酒を作る。油を使う調理が多い。

建築的特徴:石と日干し煉瓦。

宗教的特徴:太陽神を主神とする多神教。


砂漠地帯に暮らす民で、不毛な土地を生活圏にする「良い生活圏を追われた部族」であるが、地底族とは違い、古代においては高度な文明を築いた部族だった。彼らの領国は、熱帯地域に存在した農耕太陽神を崇拝する国家で、気象・地象の安定期に暦を作って農業を繁栄させた。彼らの富、豊かさを頼って多くの部族がこれに従った。特に地底族は、彼らの王宮や神殿造りに多く関わったとされる。惑星Ziで「皇帝(王の中の王)」という立場が最初に誕生したのは、この砂族内においてであった。ゼネバス皇帝がこれを真似たのは、上記のような歴史的背景も手伝ったようである。惑星Ziの気温上昇に伴って、不運にも彼らが文明生活の基盤としていた大河が消滅、巨大になり過ぎたその領国は自らを支えきれなくなって崩壊し、砂族は砂漠に点在するオアシスに生活拠点を移した。

惑星Ziの砂漠には、生態系の歴史から、化石燃料である油田は数少ないと言われている。だから彼らが気候変動後の自分達の領域内で財を築くのは、まず不可能であった。しかしオアシスを中心とした自分達の生活圏にいる限り、砂漠に守られ、誰にも邪魔されず、戦でも負けることはないため、非常に排他的である。蓄財の感覚が希薄なため交易も殆ど行わないが、その分共同体内での平等性は高く、互助の精神を有している。




虫族


身体的特徴:肌は茶、髪はグレー、目は青色とされる。

衣装的特徴:絹織物。また、昆虫型ゾイドの外骨格を削り出して作るプロテクターを、装飾として身に着ける。

食文化的特徴:湿地で育つ芋などを主食とする。豊かな生態系の中に暮らすため、その日に食べるものはその日に手に入れる、という考え方をする。

建築的特徴:竹や木材等、植物主体の建築を行う。分解できる移動式の住居も発達している。身の回りに豊富に建材があるため、恒久的に保つ建築でなく、繰り返し補修することを前提とした建築様式となった。

宗教的特徴:雨の神を主神とする多神教。



極端に出生率が低く、死亡率も低いといわれる少数部族であり、湿地帯で特異な遊牧生活を営む。惑星Ziの湿地帯は、火山活動などの影響からは遠い場所にある。その分豊かではあるものの、軟弱地盤且つ危険な生物も多く、疫病の発生源と忌み嫌われた過酷な環境であった。そんな中、少数ながらも生き延びることができたのは、その変異体とも呼べる能力ゆえである。

可視光線外の電磁波も捉える目、可聴音域外の音も捉える耳、他部族に数倍する嗅覚等、超人的とも言える感覚器をもつ。恐らく彼らは、その能力のために忌み嫌われ「追われた部族」である。「虫族の超能力の前では隠し事はできない」といったような伝説が、他部族にとっては恐怖の対象だったのである。そのため、進んだ文明との接点が少なく、独自の文化が守られている。

虫族が昆虫型ゾイドの外骨格から切り出して製作する鎧や武具は、古代の惑星Ziにおいて、高値で取引された。また、部族間戦争の時代にはそれまでとはうって変わって(有能な偵察兵として)様々な部族にもてはやされた。そのため、戦功で大きな富を為した者も多い。




鳥族


身体的特徴:肌はピンク、髪は金、目は黒。

衣装的特徴:多様な染色技術を用いた麻、木綿織物。

食文化的特徴:陸稲や木の実を主体とした食。

建築的特徴:木材建築。樹脂により耐腐食性を高めるなどの技術を多用。

宗教的特徴:自然神(精霊)を崇拝する多神教。


急峻な高山や森林地帯などに住み、豊富にある食糧を狩猟・採集などで蓄え、早くから蓄財を行うことができた。しかし、のんびりとした性質を有するため生活圏を拡げすぎることは無く、侵略や略奪とは縁遠い部族である。水源地を領地に持つことを他部族との交渉のテーブルに置くことはあったものの、川上で水をせき止めて下流域の部族に貢納を求めた風族と違い、ダムを建設して水源管理を請け負うといった友好的な関係を維持しようとした。これは、低地ほどの利便性を持たない高地に住む彼らが、森から切り出す材木の市場として、また山地にはない資源をもたらす交易相手として、下流域を必要としていたためであった。逆に言えば、彼らが囲う森林・山岳地帯は彼らが独占すべき資源の宝庫であり、鳥族は、自然に依存して生活してきたと言える。加えて、鳥類型ゾイドを使役することで強力な戦力を保持し、他部族から大いに頼られた。

ただしそれだけに、自分達のテリトリーを侵す者には容赦無い報復を行う。砂族ほど排他的ではないが、共同体外部からの侵入者を嫌う傾向は強く、昔は鳥族が山裾をパトロールする姿が多く見られたという。飛行ゾイドの扱いに長け、優秀な飛行パイロットを輩出した。




火族


身体的特徴:肌は褐色、髪は黒、目は赤茶。

衣装的特徴:綿織物。

食文化的特徴:生態系が広がらないやせた乾燥地域でも育つトウモロコシを主食とする。

建築的特徴:花崗岩等の火成岩や、煉瓦を建材とする。

宗教的特徴:火の神を主神とする多神教。


過酷な火山地帯を生活域に選んだためか、激しい性格の武闘派で知られる部族である。彼らは子弟を火山帯に連れていき、一人で生き抜くすべを教えた。また海族のような弁舌家を毛嫌いしており、「余暇があるなら体を鍛えよ。顔色は良くなり、躰は逞しく、(中略)弁舌は簡潔になるだろう。海族のように無用なお喋りを続けるのではなく」と言って子どもを教育した。このため、力こそ正義・文化であると考える好戦的部族と思われがちだが、如何なる時でも明朗快活で、どんな苦境にも顔色を変えないタフさを持っている。火山地帯は、地殻変動著しい古代惑星Ziの中でも最も苛酷な自然環境である。それを住処に選んだだけのことはあると、他部族からは一目も二目も置かれている。

地熱や水蒸気を利用した工作機械を早くから使い始めた文明的な側面も持つ。また、火族と地底族は古代から協力関係にあり、硫黄と硝石から、惑星Ziで初めて火薬を発見した。彼らは戦争に積極的にこれを用い、勢力を広げることに成功したのだった。



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