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惑星Zi史概説:8,区別に根ざした社会 [付属図書館]

 以上、現代について叙述するために必要な惑星Ziの古代~中世史について概観してきた。これらのことが現代史に落とす影について、最後に述べたいと思う。
 ヘリック1世王が目指した、ヘリック王国の「民衆の利益」は、言い換えれば王国に属する「最大多数の民衆の利益」に他ならない。それは、多数決による合議制を是とする、いわゆる民主主義に帰結した。しかし、少数者による寡頭政が多数派の利益をもたらさないのと同様に、多数決によって決められた政治は少数派の利益を代表するとは言えない。
 この場合の少数派とは、貴族的身分の者だけを意味しないことを忘れてはならない。最底辺の弱者をも含んでいるのである。結局、ヘリック王を支持したのは最大多数勢力である中間的階層の者達であり、それ以外の者達は政治の舞台上で敗北劇を繰り広げるだけの存在となった。貴族的身分の者の多くは民衆におもねって生き残る術を見出した。しかし、底辺側に区別される人々は、底辺層同士で相互扶助をし合うよりほかの選択肢を失ってしまった。ヘリック王が目指したものが「統一国家」であったが故に、少数者の利益、彼らの自治性を認めることが出来ず、政治的敗者を生む結果となってしまったのである。
 敗者となった集団は、これに反発する。この分断は、同一国家内での部族関係宥和にとって大きな障害となる。部族的枠組みが、このような階層構造に支えられる形で、微妙に形を変えながらではあるものの、残存していくことになるからである。ヘリック王国からのゼネバス帝国分裂など、以降惑星Ziを襲う戦乱の歴史には、このような、古く根強い背景が存在したのである。

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