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魚雷 [博物館]

魚雷



魚雷




Torpedo


目次


1,魚形水雷



2,対潜魚雷の発達



3,ソナー



4,沈底魚雷とサブロック



1,魚形水雷





 ビーム兵器が注目されがちな陸上用戦闘機械獣などと違い、潜水艦や水中用戦闘機械獣の主武装としては、魚雷こそが今でもなお現役の兵器である。魚雷は、元を辿れば推進力を持たない機雷(水雷)や、曳航式水雷などに行き着く。魚雷という言葉は「魚形水雷(自走式水雷)」を略したもので、端的に言えば推進力を備えた機雷ということになる。言うまでもなく、陸上におけるロケット兵器であり、誘導装置を備えていることからミサイルに喩えることもできるだろう。

 知っての通り、水中ではビームやレーザー、実体弾を打ち出す砲熕兵器までもが有効性を失う。自らが推進装置を持ち、比較的低速ながらそれを補う追尾能力を持つ誘導兵器は、(水中に適合した形で製造すれば)水中での有効性を失わない数少ない武器である。そのため、多くの水中型ゾイドが魚雷を装備している。

 水中での爆発による破壊力は、同じ火薬量ならば水上爆発の数倍に値する。これは抵抗のほとんどない空気中で爆発エネルギーが四散してしまうよりも、水の抵抗に押し戻されたぶんだけ爆発エネルギーが集中するためである。そして命中すれば穴が開き、穴から多量の海水が侵入して沈没を早めるのも魚雷攻撃の特徴である。潜水艦・水中型ゾイドは水中に潜ることにより「隠密性」を手に入れるが、それは敵と戦う前に「水圧の壁」と戦わされることと引き替えである。





2,対潜魚雷の発達




 魚雷は、元はといえば水上艦艇等を攻撃するために生まれたものである。だから、魚雷の運動は海面近くのほぼ2次元(面)に限定されていた。しかし、水上艦艇に対しては、超高速で遠距離から攻撃可能な誘導砲弾や対艦ミサイルの方が効率よく撃沈できる時代となり、魚雷は海中にまで潜航することのできる潜水艦を攻撃するためのものとして役割を限定されることとなる。海中の潜水艇を追って3次元の運動を要するようになると、誘導装置の性能不足や、水圧による熱機関式魚雷の雷速低下という問題が生じてきた。また、浅近海で活動する静粛な潜水艦艇は高度な音響妨害を行っている。各国海軍にとって、魚雷の性能向上は必須の開発努力であった。

 魚雷に使われる動力は、古典的な燃料式レシプロ或いはタービン機関に始まり、ポンプジェット、ロケット推進、イオンジェット、MHD推進まで多様である。魚雷の動力開発は主に速度と射程距離の伸長、そして雷跡(排気などによって生じる魚雷の航跡。魚雷が早期探知される原因となる)の消去を目的とする。速度が上がれば、一定の射距離を航走するのに要する時間が短くなり、その間の目標移動が少なくなるので、命中する確率は向上する。特にイオンジェットやMHD推進では、技術的問題さえ解消されれば200~300ノットの超高速魚雷も開発が可能といわれている。

 現在、推進装置は、電池の高性能化に伴い熱機関よりも電気式機関が主流となった。熱機関の場合、深く潜るほど排気の背圧が高くなり出力が低下するという問題があるためだ。電気式は熱式よりも速度と射程で劣るものの、深度に関わらず雷速は一定で、雷跡も残さない。なお、ここでいう電気式推進はイオンジェット・MHDだけを指すのではなく、電池によるスクリュー推進も含む。





 さて、音響などで目標を探知する、「シンカー」に搭載されたホーミング魚雷や、磁気などを用いた感応信管の登場により、魚雷も誘導兵器となった。このことは長射程からの攻撃により自機の安全性を確保できるようになったことを表す。

 初期の対潜用魚雷は有線誘導であった。目標近くまでは有線誘導で導かれ、最終段階でホーミングするというものである。水中音響による目標探知に伴う誤差、魚雷頭部の受信装置の性能不足等によって採られた解決策であるが、現代では魚雷自体がコンピュータを搭載し、目標識別や最適箇所への命中などの知能的判断を行えるようになっている。なお、有線誘導が消滅したわけではなく、光ファイバーによる双方向通信で(射程を除いて)無線式魚雷以上の性能を発揮することが可能となっている。

 海戦も時代を経ると、魚雷開発の課題点にも推移が見られるようになった。推進装置の性能向上による高速・長射程化が、以前ほど重視されなくなってくるのだ。

 惑星Ziにおける海戦の歴史は、主に沿岸型作戦の歴史であり、外洋型作戦は稀にしか見られない。そのため海中戦力の殆どは、小型の船体を持ち、静粛性に優れたものである。これは即ち、これら敵戦力と戦う際、ソナーによる探知・類別や兵器の音響ホーミングに大きな労力をかけるということに繋がる。また、ソナーは元々海水の温度差・比重差などによって影響を受けるためレーダーほど遠距離の敵までは探査できない上、沿岸水域は水中音波伝播環境が複雑(沿岸浅海面では海水密度・温度や塩分濃度が一定ではないため、多くの潮目を形成して音の進路が複雑になる。海底・海面からの反射もある)で、外洋に比べて尚更に敵潜の発見力を低下させるのだ。これも水中兵器開発の困難さを語る際によく取り上げられる事象である。150~200kmという最も長距離を音探できる「音束収斂帯法(コンバージェンスゾーン法。50km~70km周期でソナー音波が海面に収束する現象を利用する)」には5000m以上の水深が必要とされ、水深の浅い沿岸水域ではダイレクト・パスによるソナー探知法に頼らざるを得ない。そのため、中距離(約30km)以下の探知・類別しかできなくなる。

 このことから、対潜武器システムにはソナーシステムとホーミングシーカーの目標探知類別能力の向上が大きく要求されることとなる。





3,ソナー





 ソナー、音波を利用した水中探知機(SOund
Navigation And Ranging)は、海洋で運用される戦闘機械獣の殆どに搭載されている。沿岸戦が主流である惑星Zi戦史の中で、浅海面での索敵能力は海洋戦闘機械獣の死命を決する条件である。対潜ゾイドへの警戒然り、機雷掃討然り、である。

 超音波は、その周波数がとても高いため、空気を主な媒質とする本来の音の性質は持っておらず、水などの液体成分でその透過性が最も良好であるが、伝播経路上に固体状の硬いものがあると、超音波が伝わらないかあるいは反射してしまう。流体の均一な部分ではまっすぐ透過するが、異なる媒質の境界面では反射、散乱、屈折、減衰をしながら進む。
 これらの性質を利用して、体表面から超音波を発射し、主にその反射波を受信して、それを画像として描出させるものが、ソナーシステムである。ソナー側から出す音に対する反射波を利用して相手の方角や距離を測る「アクティブソナー」と、相手の発する種々のノイズを聴音・分析する「パッシブソナー」の2方式が存在するが、条件によって有利不利が異なるので、アクティブ型の音波変換器を停止することでパッシブ型をセレクトできるようにし、両方使えるようにしたものが主である。

 目標から来る音波は一定方向からやってくるわけだが、この方向は、複数在る受信波器の位置の違いによって生じる音波到達までの時間差を合成することによって特定される。つまり、人間の耳が左右に1つづつあることで音源の方向を感じ取るのと同じ理屈である(図1,2)。音波発振と反射波到達までの時間差からは、距離を特定できる。またコンピュータ分析にかけることで、探知した物体の外形・材質、それが戦闘機械獣であった場合その種類まで特定できるのだ。受信できる音波の周波数域は広く設定してあるのが普通で、ありとあらゆる局面で活用できるよう配慮が為されている。場合によっては陸上でも用いられることがあったほどである。

図1:音源が正面でない場合
sonar.gif
図2:音源が正面の場合
sonar2.gif
音波の、両耳(受信器)への入射角度・移動距離(到達時間)が左右で違う 音波の、両耳(受信器)への入射角度・移動距離(到達時間)が左右とも等しい






4,沈底魚雷とサブロック




 最後に一般的な魚形水雷と形態の異なるものについて紹介しよう。

 機雷型魚雷とも呼ばれる沈底魚雷は、その名の通り海底に横たわって潜水艦の接近を待ち、接近してきたものを攻撃対象として識別すると目標に対して魚雷を発射するというものである。

 サブロック(Submarine Rocket)は、水中を航走する魚雷の速度の遅さをカバーするために目標付近までは空中を飛翔する方式をとったものである。魚雷発射管から発射されるが、海面に出るとロケットエンジンに点火して海面上を弾道を描いて飛翔する。目標に接近するとロケット部分を切り離し、減速して海中に入り、音源を求めてホーミングする。遠方からの潜水艦攻撃に有用である。ハンマーヘッド等の魚雷を備えない海戦用ゾイドは、ミサイルコンテナに対潜兵器としてサブロックを装備しない限りウォディック等の純潜水ゾイドと戦うことはできない。なお、ウォディックが装備するミサイルランチャーは元より水中発射式であるが、サブロックではない。よって、水中戦では主に音波砲を使用することとなる。









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