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荷電粒子砲 [博物館]

荷電粒子砲

Particle Projection Cannon Beam Cannon

目次
1,荷電粒子砲とは 2,粒子加速器 3,荷電粒子砲の仲間



1,荷電粒子砲とは


 荷電粒子砲は


1)プラズマの元となる物質
2)粒子加速器
3)抽出電磁コライダー
4)偏向器


を基本構造とする。


 荷電粒子砲とは、荷電粒子にエネルギーを付与し、これを射出する武器である。その運動エネルギー及び粒子自体のエネルギーを以て対象を破壊または消滅させる。レーザーと並ぶ指向性エネルギー兵器の一つで、目下のところ、ゾイドに搭載される兵器の内で最も大がかり且つ最も威力の高いものとなっている。いわゆる「ビーム砲」とは、細い流れとなって進行する粒子集団=粒子ビームのことであり、荷電粒子砲もこのカテゴリーに入れられる。註1
 電磁波の波長(波)・位相(形)を揃えることでエネルギー密度を高めて発射するレーザーと違い、荷電粒子砲は「光学兵器」ではない。光条を発する見た目からは想像できないだろうが、むしろ運動エネルギー兵器と呼ばれるべき代物である。このため射撃時には反動を伴い、それは威力の高い物ほど激しい。一般に反動の生じない指向エネルギー兵器であるレーザーは、「光」から成っている。「光」は「光速」という望みうる最高の速度を達成できるが、「光(電磁波)」を媒介する素粒子「光子」には質量が無いためエネルギーを増しづらい欠点がある(だからこそ反動がないのであるが)。
 運動エネルギーは、


(1/2)mv2


で表される。この式からは、光子の質量(m)が0である限り速度(v)が光速まで増大しても運動エネルギーは得られないことがわかるだろう(しかし、実際には僅かだが運動エネルギーを持つ。これはニュートン力学では説明できず、特殊相対性理論から導き出せる。ただし非常に弱い)。
 荷電粒子砲の攻撃力は運動エネルギーによって決定し、これに比例する。このため粒子加速器の性能の向上が荷電粒子砲の威力向上に繋がるが(勿論、偏向集束器もおざなりにはできない)、同じ速度であれば重元素を飛ばす方が威力が高いのも事実である。
 無論、射出時の速度は荷電粒子砲を搭載しているゾイドが発電可能なエネルギー量に影響される。このため、同じ「荷電粒子砲」であってもゾイドコアや補助ジェネレーターの出力によって威力は異なっており、「このゾイドは荷電粒子砲を積んでいる。だから強力だ」などという論理は、デスザウラーのような高出力ゾイドコアを有する特殊なゾイドの生んだ迷信である。デスザウラーの荷電粒子砲が強力なのは、その凄まじいばかりの瞬間最大出力を以て加速された粒子が「タウゼロ(光速)」に限りなく近い速度を実現したからである。しかも、「加重力衝撃テイル」に組み込まれた重力制御装置の助けがあるとはいえ、亜光速で弾き出される荷電粒子の反動は凄まじく、その衝撃にすら堪えうるデスザウラーの体構造は正に驚異的であった。当時、他のゾイドに搭載された荷電粒子砲ではその威力が実現不可能であった所以はここにもある。また、プラスの電荷を纏った大気中のイオン(荷電粒子)をマイナスの電荷を発生させるオーロラインテークファンで集積するため、「弾薬」となる元素を新たに生成する必要がないことも特筆すべきことであろう。註2
 放出される荷電粒子は皆同じプラスの電荷を持つため、互いの反発力で拡散しようとする。このためフォーカスコイル(偏向器)による電磁誘導で軌道を収束するのだが、磁気で束ねることができる粒子ビームは発射後も惑星磁場や重力の影響を受けやすい。そればかりか荷電粒子は空気中の物質と衝突して威力が減少するため、実用的なエネルギーを得るためには大規模な発電機(ジェネレーター)を必要とする。ジェネレーターを自分たちで調達しなくてはならない地球人にとって荷電粒子砲は決して実用的な武器とは呼べず、特に大気圏内ではこれを使用していなかった。が、自身が「ミニ恒星」とも呼べるエネルギージェネレーター「ゾイドコア」を搭載し、近距離戦闘に主眼を置く惑星Ziの兵器「ゾイド」にとっては、荷電粒子砲は必ずしも効果の薄いものではなかった。註3



2,粒子加速器


 荷電粒子砲に用いられる粒子は様々で機種によって異なるが、機構自体はどれもほぼ同じものを持っている。その最も重要な部分が、粒子の加速を行うその名も「粒子加速器」である。
 なぜ「加速」する必要があるのか、と疑問に思う者もあるだろう。これは、イオンや電子などの荷電粒子がそれ単体では化学反応によるエネルギーを内包しないためである。そのため、これら粒子のエネルギーを増すことは、運動エネルギーを上昇=「加速」することと直結している。
 加速には、レーザーや放電による電磁気学的な方法が一般的に用いられている。プラスの電圧を電子に与え続け、「加速」するのである。強力な電荷を与えることで物質は原子核のみのイオンに変わり、高度にイオン化した物質は高温のガス状態「プラズマ」となる。
 この際に用いられるレーザー或いは放電は、ゾイドコアの直接的な出力によるものである。プラズマを発生させるくらいであるから、それ自体で非常に強力な武器と成りうる。が、前述の通りコアのエネルギーを荷電粒子の形で発射するのとレーザーとして発射するのとでは、それを構成する素粒子の性質(質量の差など)のゆえに得られる効果が違うことを付け加えておく。荷電粒子砲もレーザーも、空間の粒子密度に応じて威力を減殺される性質を持つが(※粒子ビームは質量をもつため、レーザーに比べれば威力の減衰は小さいのであるが)、レーザーが粒子ビームの代用となりうるかというと、必ずしもそうではないのである。


 加速器にはいくつかの種類がある。
 「線形加速器(リニアアクセラレータ)」は、直線空洞の中を1列に並べた共振器によって高周波を発生、この中で荷電粒子を加速する。
 「ベータトロン」は、互いに向き合わせた円形電磁石の極周辺で起きる静電誘導を利用し、ドーナツ状の真空容器内で粒子を加速する。
 「サイクロトロン」は、円形真空容器を磁場や電圧の中に置き、この中で円運動する荷電粒子を同周期の高周波電場で加速する。荷電粒子は回転の半径を次第に大きくしていき、やがて加速器の外へ飛び出す。同心円上を幾度も回転運動させるこうしたタイプの粒子加速器の登場により、線形加速器よりも加速する距離を飛躍的に長くすることができるようになった。
 「シンクロトロン」は、ベータトロンとサイクロトロンの二つの加速器を組み合わせたもので、加速の初期段階をベータトロン方式で、その後をサイクロトロン方式によって加速する。電磁石によって加速する荷電粒子の軌道を安定させ、その軌道上に生じた磁場で加速するため、一つの軌道で同じ粒子を何度も加速してエネルギーを蓄積することができる利点がある。


 なお、円運動による粒子の加速には大きな制約がある。
 回転運動中の荷電粒子は「シンクロトロン放射」によって電磁波を発生している。「シンクロトロン放射」とは、磁場や液体・固体の中では光の速度が通常よりも遅くなるために、この中を加速されるうちに粒子の速度に光子の速度が追いつけなくなり、粒子からはじき出される現象である。電磁相互作用を媒介する素粒子である光子は取り残されたあと光や電波となるのだが、粒子ははじき出された光子の分だけエネルギーを失うこととなる。この時失われるエネルギー及び軌道湾曲で減少する荷電粒子の運動エネルギーが、与えられるエネルギーに対して平衡状態になると、それ以上の加速ができなくなる(以降の加速はエネルギーの無駄遣いであり、必要以上に「溜め」ることは全く意味がない)。このため「サイクロトロン」や「シンクロトロン」の粒子加速器は大型であるほど(湾曲が緩やかになるために)加速効率が良く、小型ゾイドに搭載できる程度のものでは大きな威力が望めないのが実際である。
 デスザウラーに搭載された加速器がシンクロトロン方式であることはよく知られている。しかし、いかに「超大型」とされるデスザウラークラスのゾイドであっても、光速を達成するだけの粒子加速器を搭載することは本来的には不可能である。強力な磁場で急激に加速しようとすればするほど、その影響でシンクロトロン放射が強まり光速から遠ざかるからだ。デスザウラーの荷電粒子砲が最高亜光速を達成できたのは、恐らくシンクロトロンで可能な限り加速した荷電粒子を、頸部に至る多連リング式線形加速器で「最終加速」しているためと思われる。註4



3,荷電粒子砲の仲間


a)ビーム砲・加速ビーム砲・プラズマ粒子砲・プラズマキャノン等(装備ゾイド:多数)
 その名の通り、ビーム(高エネルギーの粒子線)を加速して撃ち出す武器。荷電粒子砲の一般名である。各々に威力の差こそあれ、基本的には同じ武器を指す。
 なお、なぜ「荷電粒子砲」と名称上の区別が為されていたのかは不明であるが、高エネルギーのゾイドコアによってのべつ幕無しに大気中の粒子を加速するものを「荷電粒子砲」と呼び、「弾薬」としての粒子が装備の中に含まれているものを「ビーム砲」などと呼んでいる、というのが一般的な説である。ただ最近では、ゴドスに装備されたビーム砲も「荷電粒子砲」と改称されるなど混乱が増している。先に述べた荷電粒子砲に関する迷信が原因と見られ、軍事・兵器評論家らが「デスザウラー効果(或いは開発者の名をとって、ドン・ホバート効果)」と呼ぶ一連の社会現象の一つである。


b)パルスビーム砲(装備ゾイド:ペガサロス)
 脈動ビーム砲。いわゆる高速連射式のビーム砲のことで、ごく低反動のビームを断続的に浴びせる。


c)波動ビーム砲(装備ゾイド:バトルクーガー)
 不明。


d)ビームニードル・徹甲ビーム砲(装備ゾイド:キングバロン、シャドウフォックス)
 粒子間の間隔を極力狭め(もちろんガス化しているので限界はあるのだが)、高密度・高速で放つ貫徹力を高めたビーム砲。破壊力ではやや劣る。


e)火炎ビーム砲・ブレーザーキャノン(装備ゾイド:キングバロン、ガンブラスター)
 短射程で用いられる拡散ビーム砲の一種で、広域に広がる低密度プラズマが周辺の大気を爆発的に燃焼させる。その様がさながらナパーム弾のようであることから、「火炎」の名がつけられた。尚、破壊力や貫徹力では大きく劣る。


f)収光ビーム砲(装備ゾイド:ヘルディガンナー)
 磁束密度を高めたものだが、その目的が装甲の貫徹ではなく射程延長に置かれているもの。荷電粒子の放射時間をやや長くすることで、大気の「壁」を突き進める時間を長くしているのである。


g)フォトン粒子砲(装備ゾイド:ジークドーベル、アイスブレーザー)
 電磁相互作用を媒介する素粒子・フォトンを放つ粒子砲だが、フォトンは質量がゼロであるため加速してもあまり意味が無い。ただし、質量が無いだけにエネルギーと運動量を保存でき、射程が長いのが特徴である。機構的には粒子砲の体裁を有するが、性質はレーザーと大して変わらない。


h)ビームスマッシャー(装備ゾイド:ギルベイダー)
 加速した荷電粒子を円盤状に収束して放つ武器。翼の円盤はそのまま円形加速器(サイクロトロン)として用いられており、構造はデスザウラーほど複雑ではない。また、シンクロトロン放射によるエネルギーロスを補う機構が無いため、デスザウラーほどの加速も得られない。しかしながらこの兵器はデスザウラーの荷電粒子砲以上に恐れられている。その所以は、高密度な荷電粒子を「連続的」に「長時間」放出する持続性にあり、ギルベイダーのコアが生産したデスザウラーをも上回るエネルギーはそこに費やされている。デスザウラーの荷電粒子砲が戦略兵器としての性質を持っていたのだとすれば、余計な破壊をもたらさず目の前の敵だけを切断するギルベイダーのビームスマッシャーは、純粋な戦術兵器としての「荷電粒子砲」の究極型と呼べるだろう。


i)ゼネバス砲(装備ゾイド:セイスモサウルス、デスザウラー・ツインゼネバス)
 コア出力ではデスザウラーに見劣りするセイスモサウルスだが、これがネオゼネバス帝国の決戦兵器として選ばれた理由は、偏に「ゼネバス砲を搭載できる」点にある。
 ゼネバス砲は、ゼネバス帝国において設計された伝説的威力を誇る荷電粒子砲である。帝国科学技術院が設計した線形加速器となる長大な砲身「ゼネバスリニアコライダー(ZLC)、秘匿名称『0番目の寂しい子供(Zeroth Lonely Child)』」と、質量の大きい粒子をビームの外縁に配することで直進性を高めた「帝国技術院式磁気整列直進運動システム(Magnetic Aligning Straight Kinetic System of Imperial Science and Technorogy Agency:MASKSISTA 、秘匿名称『仮面』)」を持ち、デスザウラー並みの加速能力と、デスザウラーを遥かに上回る射程を実現した。この兵器は、国威発揚の願いも込めて「ゼネバス砲」と名付けられたものの、陽の目を見ることなく中央大陸戦争・第一次大陸間戦争共に終結を迎えた。しかし、重要機密としてガイロス帝国にも知られることなく秘匿されており、ネオゼネバス帝国が中央大陸に戻った後に復活している。



註釈:


※註1
同じ様な機構を有するものに「イオンジェットエンジン」「プラズマ推進器」がある。これはイオン化した物質を電磁気によって加速し、推進力とするものである。また、電荷を持たない中性粒子を加速する粒子ビーム砲も存在し、この場合は「中性粒子ビーム」などと呼ばれる。


※註2
 高速で動く物に流れる時間は、周囲の時間の流れより遅くなる。「タウ【sqrt(1-(v/c)^2)、sqrtは平方根、vは物体の速度、cは光速】」とは、このときの物体を外から観測するとき質量や時間の流れを算出する値であり、「タウがゼロ」に近づくほどその物体は光速に近づいていることになる。
 「ほぼ光速」を達成したデスザウラーの場合、撃ち出された荷電粒子は、対象物までも瞬時にプラズマ化してしまうほどの運動エネルギーを持つ。そのため目標は素粒子レベルや「純粋エネルギーの塊」のレベルまで分解され、周囲を巻き込みながら炸裂・爆発・蒸発する。この時のエネルギーは5割程度が爆風に、4割程度が熱線に、残り1割が電磁波に変換されている。また光速粒子の衝撃波は射線以上の広範囲へ被害を及ぼす。実際の被害は光線の照射範囲だけに止まらないのである。しかも、条件次第では対象が連鎖的に核分裂或いは熱核融合反応を起こす危険性もあるとの報告も存在し、デスザウラーの荷電粒子砲が「別格」であったことを示している。


※註3
なお、荷電粒子砲発射前にゾイドの体表で放電現象が起きるのは、粒子加速器に注ぎ込まれる膨大な電力が起こす誘導電流のせいである。


※註4
体内に荷電粒子砲を仕込まれたゾイドとして他に「ジェノザウラー」、「デススティンガー」、「バーサークフューラー」などがいる。これらのうち、ジェノザウラーとバーサークフューラーは埋め込まれた粒子加速器を「直線」に近づけるための可変機構を有しており、効率的な加速を目指して開発されたことが窺える。サブジェネレーターで出力を高めてやればやるほど粒子の高速化が実現できるだろう。が、デススティンガーは前方に向けて射撃する際、加速器が大きく湾曲してしまうために強化が難しい。デススティンガーの荷電粒子砲が最大の威力を発揮するのは、尾部が一直線に近い形態をとる時、つまり上方或いは後方に向けて放つ時である。
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