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ミサイル [博物館]

ミサイル



ミサイル






Missile


目次


1,ミサイルのシステム



2,ミサイルの分類



3,ミサイルの誘導方式



4,ミサイルの能力



1,ミサイルのシステム





 実体弾兵器の項でミサイルを紹介しなかったのは、砲熕兵器との差異を明確にするためである。両者の大きな相違点は、ミサイル自身が推進装置と誘導装置を備え、目標に対して追尾を行う点にある。

 砲弾は、射出前に各種装置で収集したデータ(目標と射出母機との距離や風向・風速といったもの)をもとに、適切な射出方向・角度を算出して放たれる。射出後は、基本的には初速で得たエネルギーで飛翔し続けるが、計算外の風、目標の著しい移動によって命中確率が低下することも少なくない。誘導砲弾というものがあるが、ミサイルほどの追尾性能は持たせられない。

 これに対してミサイルは、捉えた目標が移動したり、気象(風雨等)の影響を受けたりしても、その性能でカバーできる範疇であれば、絶えず方向を修正しながら攻撃対象に向かって飛翔を続ける。これは、ミサイルが「捜索」「捕捉」「識別」「追尾」といった誘導プロセスを有しているためである。推進剤を搭載するため、サイズの大型化さえやってのければ、簡単に飛翔距離を伸ばすことができることも大きな強みである。アイアンコングはミサイルの「強み」をもって大成功を収めた兵器の代表で、対空ミサイルとしても機能する射程距離50kmの6連装ミサイルランチャーや、射程距離200kmの大型対地攻撃ミサイルを備えることで、極めて高い戦術的優位を中央大陸戦争終結まで維持した。

 ミサイルのシステムを構成している各種装置は以下の通りである。






1)誘導装置

2)制御装置

3)弾頭

4)操舵装置

5)推進装置





 ミサイルのホーミング誘導の流れを図示すると次のようになる。






目標の検知・追尾→誘導演算→制御演算→機体の運動






 あとは目標に命中するまでこの繰り返しとなる。




 誘導装置は、目標を捕捉(ロック・オン)する「シーカー」と、「シーカー」から得られた目標の位置情報から誘導信号を算出する演算回路などから成る。これらが、目標方向とミサイル中心軸のずれを検出、制御装置へ修正信号を送る。
 制御装置は、誘導装置から送られてくる信号や、加速度センサー・角速度センサー等によって得られたデータをもとに、操舵装置をどちらに何度駆動すべきかを算出する。
 弾頭部は、種別によって様々であり、実体弾兵器と変わらない。ただし、一般的に運動エネルギー弾頭はあまり使われず、化学エネルギー弾が主となる。
 操舵装置は、飛翔する際の舵取りの役割を負う。ミサイルに備わった操舵翼や推進方向制御機構、サイドスラスター等により、ミサイルに対して重心回りのモーメントを発生させ、望みの方向へ運動させる。
 推進装置は、言うまでもなくミサイルに推力を与える装置である。固形燃料ロケットモーター、液体燃料ターボジェットエンジン、イオンジェットエンジンなど方式は様々である。

 なお、ミサイルは撃ち放し性(『ファイア&フォーゲット』。ミサイルが自律性を持ち、母機がミサイルを発射したらすぐ退避行動がとれる能力)があるものが重宝される。そのためには、ミサイルの1発1発に高速状態でも効果的に敵機を追尾するセンシング能力を持たせなければならず、高額化は免れ得ない。  「1回撃てば(命中する、しないに関わらず)お終い」が宿命であるミサイルのコストを下げ、費用対効果を上げる方法がある。特に母機の機動性を殺さずに高い命中精度を求める場合、重量に制限のない地上装置にある程度機能を依存する方が、小型で高性能の器材を用意せずに済む分、安価にあがる。ミサイル本体が搭載する演算装置などの高価な器材を、地上装置に装備するのである。つまり、早期警戒・識別・捜索・捕捉・追尾といった機能はレーダーステーションに集約、誘導演算や戦術的指揮管制は射撃管制装置に任せてしまう。ミサイルの機動は、これら外部装置からアンテナマストグループを介して送信される情報に基づいて行う。ただし、イメージングセンサーにより目標の高解像画を得ることが目標認識・対象識別の助けとなることから、有視界戦闘を除いてやはり撃ち放し方式のミサイルの方が撃墜の確実性は高い。



2,ミサイルの分類





 ミサイルを分類する際、主として用いられるのが発射位置と目標位置の関係による分類である。以下の表はその主なものである。

AAM
(Air to Air Missile)
空対空ミサイル
航空機に搭載され、航空機を目標とするミサイル。目標とする航空機の発するジェット噴流(赤外線)や、マグネッサーシステムの強電磁場を捕捉して誘導する方式、母機又はミサイル自身の発するレーダー波の反射波を捉えて誘導する方式がある。
ASM
(Air to Surface Missile)
空対地ミサイル
航空機から地上施設や艦艇を攻撃するためのミサイル。母機が対空兵器の攻撃に晒されるのを避けるため、数十km~数千kmの射程を有する。そのように安全な距離から発射できる性能をもつミサイルを「スタンドオフミサイル」と呼ぶ。目標に接近するまでは慣性誘導を行い、終末段階に至って赤外線やアクティブレーダー等による誘導を行う。
SSM
(Surface to Surface Missile)
地対地ミサイル
地上から地上、又は艦船から艦船を攻撃するのに用いられるミサイル。ASM同様射程が長い。目標に接近すると、画像情報から目標を識別して誘導を行う。
SAM
(Surface to Air Missile)
地対空ミサイル
地上や船舶から航空機を攻撃するミサイル。AAMと基本的に変わらない高い機動力を有するが、ミサイル迎撃の用も果たすため、高空域にまで到達するよう設計されている。一般的に「ルックダウン」能力(高高度から低高度の目標を探知・追跡する能力)が必要ないため、備わっていない場合が多い。

 なお、ここに掲載したもの以外の分類法としてよく知られたものに、「AZM」という呼称がある。これは「Anti-Zoid(対ゾイド)ミサイル」の略称であり、戦闘機械獣を目標とするものなら地上から発射されても航空機から発射されても「AZM」と呼ぶ。そのため、この呼称はここでの分類法と合致しない。赤外線誘導や、有線誘導などが用いられる。





3,ミサイルの誘導方式





 次に、ミサイルのミサイルたる所以、「追跡システム」について述べる。

 ミサイルは目標を「ロック・オン」する(絶えず目標を捉え続けている)ことによって、極めて高い命中精度を誇る兵器となる。移動目標のコースを自動的又は手動的に監視することを「追跡(tracking)」と呼ぶが、追跡装置は光学的、レーダー、赤外線センサ、目視など様々である。〈BR〉
ミサイルの誘導方式にはおおまかに分けて以下のようなものがある。

ホーミング誘導方式 アクティブ ミサイル自身から目標の探知・識別のために目標に向かってエネルギー(レーダー波、レーザー、音波等)を照射し、その反射エネルギーを観測するアクティブ・センサーによってミサイルを誘導する「能動的追尾」である。送信機・受信機ともに内蔵しているため、ミサイルは必然的に大型となる。
セミアクティブ アクティブ方式ミサイルが内蔵した送信機を発射母機や地上装置に持たせたもので、半能動と訳される。味方の照射レーダー(イルミネータ)から送られたレーダー波等の反射波を探知し追尾する。
パッシブ 目標の発する可視光線・音波・ミリ波・赤外線等を受信してミサイルを誘導する。赤外線は、絶対零度以上ならば全ての物質から放射されており、ファシットデザインや電磁波吸収塗料によるステルス技術は通用しない。ただし、赤外線が普遍的であるだけに、状況によっては目標の識別が困難となりやすいのが欠点である。そのため、フレア弾等で回避が容易である。
指令誘導方式 有線 目標及びミサイルの位置測定や誘導制御演算を行う能力を地上装置等といったミサイルの外部に持たせ、誘導信号送信用のワイヤや光ファイバーケーブルを介して送信される指令によって、外部装置で演算した予想会合点へ誘導される方式。ミサイルはワイヤを曳いたまま飛翔するため射程は短い。
無線 同じくミサイル外部からの指令を、無線信号で送信して誘導する方式。無線電波が届く範囲であれば有効であるが、ECMなどの影響をもろに受ける。
ビーム誘導 目標にレーザー光等によるビームを照射し、そのビームの中心からのずれをミサイル自身が検知・測定することによって誘導される方式。大気による光の回折や歪曲現象などによって、遠距離での精度はあまり高くない。
プログラム誘導方式 発射前に、目標位置と飛翔経路をミサイルに対してプログラムしておき、そのプログラムに従ってミサイルを誘導する方式。ジャイロなどによりミサイルの角速度・加速度等を計測し、それらの情報からミサイルの現在位置を割り出して経路上を誘導する「慣性誘導方式」と、飛行経路上の地形とプログラムされた等高線地形データとを比較・照合しながら誘導する「地形照合誘導方式」がある。巡航ミサイルに多く用いられる。
複合誘導方式 上記の誘導方式を複数組み合わせたものをいう。例えば飛翔の初期段階では有線による指令誘導方式を用いるが、終末段階ではワイヤを切り離して赤外線パッシブ誘導を行う、といったものである。


4,ミサイルの能力





 ミサイルは非常に効果の高い武器である。特に命中率の高いものは、一発必中・一撃必殺の武器となりうる。ゼネバス帝国空軍に配備された戦闘・攻撃機シュトルヒが装備した「バードミサイル」がその最たるものだろう。「バードミサイル」は元来、ヘリック共和国の空軍力に悩まされ続けてきたゼネバス帝国軍が、「地上から敵機を撃ち落とすため」に生み出されたSAMである。試験飛行において高い機動性を持つドッグファイターであることを証明したシュトルヒは、この極めて撃ち放し性の高い高機動ミサイルを装備することによって多大な戦果を挙げている。空中戦の基本5段階は索敵・接近・攻撃・格闘戦・戦線離脱であるが、バードミサイルは多くの場合、格闘戦に移行する前に敵機を撃墜することが可能だった。しかも乱戦の中でも敵機を逃さない追尾性能のお陰で、シュトルヒ1機は事実上、格闘戦においても2機の敵機と渡り合うことができたのだ。シュトルヒのパイロット達にはエースと称される者が多いが、実を言うとそれはバードミサイルの性能によるところが大きい。であるからゼネバス空軍のパイロットの間では、通常なら5機を撃墜すればエースと呼ばれるところを「シュトルヒ乗りは倍墜としてようやくエース」と揶揄していたという。また、あるヘリック共和国空軍指揮官は上官に対し以下のような発言をしている。「シュトルヒ部隊と戦わせるおつもりでしたら、せめて敵の4倍のプテラスを用意して下さい。同数では交戦距離に至る以前に全滅します。2倍なら半数が初弾からは生き残りますが、格闘戦で全滅します。3倍ならなんとか互角に戦えるでしょうが、他部隊に追撃されれば壊滅します。4倍あれば、満足な戦果を挙げられるでしょう」

 さて、バードミサイルは「特に命中率が高い」ものの代表格であるが、では「命中率が高い」というのは具体的にはどういうことなのだろうか。

 まず第1に、目標を探知し、敵味方・目標種類等を正確に識別する能力が求められる。これが低ければ、ミサイルの肝である追跡システムが成り立たなくなる。第2に、追尾性能が高くあるべきである。誘導装置のシーカが命中以前にロックオフして敵機を見失うのでは、どんなに破壊力のあるミサイルも宝の持ち腐れとなる。この二つが高いレベルで揃って始めて、「命中率の高いミサイル」と呼ばれる価値がある。

 他にミサイルの諸性能を測る基準として、以下のようなものがある。




・最大射程・・・ミサイルが、ある程度満足のいく命中率を発揮できる最大の射程距離。大きいほど遠距離から攻撃でき、発射母機の安全を保てる。

・最小射程・・・ミサイルが空力的に操縦可能な速度に加速するまでの距離。一般的にミサイルは至近距離でロックオフしやすい。

・最大飛翔速度・・・ミサイルが最大加速度で直進する時、達成可能な速度。敵機に追いつけないのでは誘導する意味がないので、高速を達成可能であることが望ましい。ただし旋回性能は下がりがち。

・総飛翔時間・・・ミサイルが飛翔可能な最大時間。高い追尾能力を有するものほど敵機を追尾する時間も長くなる可能性があり、飛翔時間は重要な意味をもつ。

・旋回性能・・・ミサイルが運動しうる最小の旋回半径。一般に大型であるほど最小旋回半径も大きい。

・瞬間交戦性・・・目標を探知・識別後、直ちに発射できる能力。発射が早ければ敵機の回避運動も小さくならざるをえないし、発射母機の回避行動も素早く行える。

・対妨害性・・・赤外線追尾に対するフレア(赤外線光を輻射する物質)、レーダー追尾に対するチャフ(レーダー信号を反射する金属箔等の反射物質)やジャミング(電波妨害)に対抗できる能力。デコイ(囮)弾頭などをミサイルシステムが搭載しているならば、これも含む。

・耐環境性・・・振動・衝撃・加速・天候・電波干渉等に対処できる能力。

・操用性・・・ミサイルシステム全体の操作性。扱い易さ。

・安全性・・・ミサイルが任務以外に作動しないような能力。信管(fuze)を備えていることもこのひとつで、時限信管・近接信管・指令信管・遅延信管・着発信管などがある。

・信頼性・・・ミサイルが平均して何時間に一度故障を来すかを表す。

・電磁適合性・・・ミサイルシステム内部における、電子機器同士の相互干渉を避ける能力。電磁シールドなどを施す。

・整備性・・・各種部隊の手によって適切な修理・整備が可能かどうか。

・経済性・・・単価、及び研究開発・量産・調達・廃棄などにかかるコストの大きさ(というよりも小ささ)を表す。





 なお、ミサイルによる飽和攻撃は敵の回避性能を著しく阻害する非常に有効な攻撃手段であるが、打ち込まれるミサイルが適切な数を超える場合その限りではない。複数のミサイルを同一目標に打ち込む際、「兄弟殺し」と呼ばれる現象が起こるためである。これは、前に命中したミサイルの爆発により、後続ミサイルが破壊ないし損傷をうけることを指す。この場合、直撃するのはほぼ最初の一発のみで、残りは往々にして直撃する前に爆発四散する。爆風による敵機へのダメージは期待できないわけではないが、同じ数の直撃弾を見舞うのと同様のダメージを与えられるわけではないのである。

 また、短射程から長射程までをこなす万能兵器としての印象が強いミサイルであるが、一般的に短距離戦闘(「発射位置と目標位置の関係による分類」によって距離の概念が違うが、地対地ミサイルでは100~1000kmと考えてもらえばよいだろう)でしか用いられない。ミサイル迎撃技術が高度化した現在においては、目標到達までの時間が長いと90%以上の確率で撃墜されてしまうためである。特に、充分な迎撃設備を持った基地等への対地攻撃に関して言えば、長射程ミサイルはほぼ無効化されてしまう。解決策は目標到達時間を短縮する、つまり超高速化することであるが、命中精度に大きな悪影響を及ぼすのであまり実施されない。






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