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マグネッサーシステム [博物館]

マグネッサー



マグネッサー・システム





MAGNESSER SYSTEM


目次


1,マグネッサー概説



2,マグネッサーシステムによるホバリング



3,トーラススラスター



4,エリアルスラスター





1,マグネッサー概説 {MAGNEtic Stratocruising Servomotor,Electro-Radiative}






 ゾイドに高機動力を与えるものとして一般的なものに「マグネッサーシステム」と呼ばれるものがある。

 飛行ゾイドが空を飛ぶ時に発生する風は、惑星Zi(ゾイド星)人によって古くから「磁気風」と言い習わされてきた。これが推力を生みだし、ゾイドを飛ばしていることは解っていたものの、その正体は永らく謎とされていた。

 しかし、科学の面で惑星Zi人の遙か上をいっていた地球人の来訪とその後の研究によって、「磁気風」が何であるのかが解明された。それは「EMHDスラスター」と呼ばれる「MHD(MagneticHydroDynamics、磁気流体力学)」と「EHD(ElectricHydroDynamics、電気流体力学)」の融合技術、地球人の大気圏飛行技術に酷似していたのである。ウルトラザウルス始め、多くのゾイド搭載ビークルがこの推進装置を採用したのは、ゾイドとの親和性の高さゆえであった。

 MHDは地球暦1831年、地球人科学者マイケル・ファラデーによって観察された「電磁誘導」を応用した分野である。電磁誘導とは、「磁場と導体が相対的に動いている時、導体に電流が生じる」現象であり、電磁感応とも呼ばれる。MHD推進はこの「磁場・電流・力」の関係を表す法則を逆手にとり、「磁場中にある導体に電流を流す」ことで運動エネルギーを得るものである。(註1
 EHDは地球歴1928年に、ビーフェルド‐ブラウン効果として共同発表された現象を応用した推進システムである。正負電極周辺のイオン移動により発生するイオン風を推進力として利用する。
マグネッサーシステムは、これら推進システムの複合を生来的に獲得しているゾイドが、発達させた組織であった。


 推進力としてのEMHDは、地球では船舶の水上機動力として実用化されたのが初めてであった。これは海水が大気よりも遙かに通電しやすいためであったが、それでも当初は超伝導体の開発や電力の定常供給などの面で多くの問題点を抱えていた。以後、研究が重ねられて潜水艦や航空機でも実用化し、新しい推進力として脚光を浴びた。註2





 EHD推進の簡単な仕組みは以下の通りである。






1)「リニアチャネル(通路)」と呼ばれる空間に作用流体(水や空気)を満たす。チャネル入口に陽極(アノード)、出口側に陰極(カソード)がある。

2)作用流体へ電流を伝導させると、二極間に電子励起作用が起こる。

3)電位が生じ、イオン化した大気はチャネル内で電位差に応じて一定方向に動き出し、加速される。




 MHD推進の簡単な仕組みは以下の通りである。






1)「リニアチャネル(通路)」を磁石で囲み、空間に作用流体(空気や水)を満たす。

2)作用流体に電流を流し、磁界を発生させる。

3)磁石の磁界と、電流の方向に対して右ねじ方向に生じた磁界が作用し合い、流体が加速される。




 この2つの作用によって加速された大気こそが「磁気風」であり、ゾイドはこの反作用によって飛行するのである。

 この「磁気風」による推進機構は、当初「EMHD推進」と地球の学問からそのまま引き継いだ名称で呼ばれていた。しかし、ゾイド工学の専門家がEMHD推進を生み出すゾイドの体組織系を「電気的発光を伴う成層圏下巡航用磁力モーター(MAGNEtic
Stratocruising Servomotor, Electro-Radiative)」と名付けてから、これが一般化したのだという説がある。註3








2,マグネッサーシステムによるホバリング






 「フレミングの左手(図1参照)」によって表されるように、電流・磁場・力の方向は全て互いに直交している。

図1大気を用いたMHD推進における「フレミングの左手」の3次元概念図
lefthand-a.gif 磁場(B)・・・磁場の働く方向。
電流(e)・・・電流が流れる方向。
力(f)・・・作用流体(本稿中では空気のこと)が運動する方向。
推進方向・・・「力(f)」の反作用によって、マグネッサー搭載機が運動する方向。



 つまり、電流と磁場の方向が直交する面(B-e面)を動かすことによって、生じる力(f)は自在に方向づけることができる。マグネッサーシステムが垂直離着陸を可能にする理由がここにある。飛行ゾイドは磁場の向きを変えることによってB-e面の角度を変え、推力のベクトルを操っているようだ。

 なお、地球人の用いたMHD推進は主に「ヘリカル(螺旋状)スラスター」と呼ばれるもので、リニアチャネルが螺旋状コイルで構築されている。この場合、流体の運動は順次加速されていく形となるため高速を実現しやすいが、推力ベクトルの自由度が低いため機敏な動きには対応しにくい(図2)。この欠点を補うためには、スラスターそのものを可動機構にするエアロスパイク方式をとるより他ない。陸上ゾイドに装備された「マグネッサー・ホバリング・システム(MHS)」は、殆どがこのタイプである。

図2 ヘリカルスラスター
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3,トーラススラスター





 磁気風によって飛行するゾイドの翼は超伝導電磁石の性質を持っている。彼らのうち、翼面に開いた「穴」状の部分をリニアチャネルとして用いているのがプテラスやサラマンダーである。浮揚力は通電する面積・磁界の面積に比例して大きくなる(図3)。つまり、翼面に「穴」の多い(或いは大きい)ものほど揚力が大きい。この飛行方式は「トーラス(環状)スラスター」と呼ばれる。

図3 トーラス・スラスター
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トーラススラスター方式では、磁気風は翼下面に向けて吹き出す。そのため、この方式をとる飛行ゾイドは極めて高い垂直離着陸性能を持つ。水平方向への加速に当たっては、翼面と磁界の偏向により、推力ベクトルに角度をつけることで行う。




4,エリアルスラスター





 レドラー・レイノス・ストームソーダーといった翼に穴の無いタイプの翼を持つ飛行ゾイドは、リニアチャネルでなく翼面全体に磁場を形成する。この時電化された大気は、上下翼面を縦断する方向へ連続加速される(図4)。その際、翼上面と下面に速度差を自在に生じさせることができるため、一般的な航空機のように、揚力を翼断面の形状から得る必要がない。翼上面の磁気風速度を相対的に上げれば上向きの揚力が発生し、逆ならダウンフォースとなる。この方式をとる多くのゾイドの翼面が偏平且つ上下対称であるのも、これに由来する。
この方式は「エリアル(面積)スラスター」と呼ばれる。欠点は、ヘリカルスラスター同様に力のベクトルがあまり自由にならない点である。推力偏向はほぼ翼の可動範囲に限定されてしまい、速度が上がりやすい反面空中での機動性は確保しにくい。レイノスは、翼面積を犠牲にしアフターバーナーで補助推力を得ることでドッグファイトの可能な機動力を発揮したが、トーラススラスター機にはやはり及ばない。

図4 エリアル・スラスター
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 「穴」の有るタイプの飛行ゾイドも、高速ではほぼこの「エリアルスラスター」に近い流体加速を行っている。が、「トーラススラスター」が「穴」状チャネルの大きさと推力に大きな関係があるのに対し、「エリアルスラスター」においては翼面積の大小が推力の大小に重要な意味を持つ。このため、「トーラススラスター」機が「エリアルスラスター」に近い推進方式をとろうとすると、「穴」状チャネルが多いほど必然的に磁場を形成する「翼面」が小さくなっているため、加速性能に難が出る。丁度「エリアルスラスター」とは正反対のジレンマである。

 この点をクリアすることを目的としたのがゼネバス帝国のシュトルヒで、翼の前後でトーラススラスターとエリアルスラスターを組み合わせたハイブリッド方式を採用した。ハイブリッド式は両方の利点を併せ持つ機構だが、相互干渉によって推力・揚力の発生効率が芳しくなく、機体は軽量なものでなければならなかった。このため、これ以降の大火力・高速化が主流となるゾイド開発においてはハイブリッド式は忘れられた存在となった。





註釈:





※註1

電磁誘導によって生じる運動エネルギーは、「運動する荷電粒子(電流に当たる)が磁場から受ける力」を表す「ローレンツ力」としても知られ、ビーム兵器の加速•収束等にも用いられている。電磁加速式の実弾兵装として知られるレールガンも同様の法則を応用したものである。また、核融合発電技術においてはタービンを用いない直接発電方式に応用されている。





※註2

惑星Ziの大気はイオン化傾向が強く、地球におけるより高い比推力を得ることができた。





※註3

なお、マグネッサーシステムを使用すると周辺の大気が電化され、プロテクトされていない精密機器に障害が出ることがある。また、翼面付近では感電の恐れがある。この際、大気が独特の金色の光を発することが知られている。また特に大型航空ゾイドの通過した後では気候にも影響を与え、雷を発生することもある。


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