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アーマードスーツ その2 [博物館]

●機構概要

 ASという兵器が戦車や戦闘機と最も異なる点は、そのポテンシャルが着用する兵士の身体能力(運動、射撃、格闘、判断その他すべての身体能力)によって決定するというところにある。端的に言えば、何ら訓練を受けていない一般人でも着用した瞬間から自由に行動出来る装備なのだ(当然、装甲のある分、動作に制限は出てくるが)。とはいえ、30メートルを超える跳躍力や、最高時速60km以上にも達する(平地)全開走行、また索敵や攻撃のために搭載された最新鋭の電子装備を使いこなすためには、高度かつ極めて厳しい訓練が必要不可欠となってくる。
 操縦者に生身の時と何ら変わらない自由度を与えているのが、所謂「インピーダンス制御(慣性・摩擦等を仮想的に設定して、ロボットアーム等を人間が違和感なく操作する技術)」を進展させた「バイオリンク・コントロール・システム」である。ASの指先・足裏などの全身にはおよそ300の各種センサーがあり、常時状況変化を監視している。これらセンサーからもたらされる情報は、コントロールコンピュータを介してリアルタイムにパイロットに送られる。そして、パイロットの身体動作を脳波や筋電位などから感知し、指令としてスーツへと出力するのである。これによりASは操縦者の身体・運動能力そのものを倍加させるように作動するため、人間の10倍以上に相当する腕力を発揮しながら、針に糸を通すような繊細な作業をもこなすことが可能となるのだ。ロケットランチャー、ミサイルランチャー、機関砲といった重火器を複数携行しても歩兵は疲労を感じることなく活動でき、またそれを不自由なく扱うことができる。駆動系作動音も最小限に抑えられているため、操縦者の練度次第ではASを着用したままでのスニーキングミッションも可能だ。
 また、ASの多くは強固な装甲に被われ、被弾や地雷による衝撃への優れた耐性を発揮する。軍用としては30mm弾の直撃(装甲に対する弾丸の侵入角度118度以上の場合)にも耐えられる装甲車級の耐弾性が必要とされ、完全密閉型の重量級ASの場合、本格的な対ゾイド火器を用いなければ撃破できないと考えられている。オートバランサーとショックアブソーバーの恩恵により不整地の走破性にも優れ、環境設定を行うことで湿地、雪原、砂漠、山岳等多様な環境下での作戦行動が可能となっている。
 スーツの重量は一般に100~500kgと重いものの、電源が失われても着用者が潰れることはない。なぜならば、着用者はスーツの中で10数箇所の支点で支えられ、いわば「浮いた」状態になっているからである。スーツ自身が、地面に接するセミモノコックのフレームによって自重(+搭乗者の体重)を支えている。しかしながら「重さがない」わけではないため、沼地等の極めて軟弱な地盤等ではスタックすることもあるし、電源が落ちれば身動きひとつ取れなくなるだろう。そのような場合のために、レバー操作によって装甲接続部全体(ハッチを下にして横たわっていた場合でも脱出が可能になるように)を緊急解除できるようになっている。
 また、高所からの落下によるダメージはASのシステムに深刻なダメージを与える畏れがあるため、ロケット燃料などを噴射するキック・モーターが装備される事が多い。瞬間的な噴射で着地の衝撃を緩和するのである。なお、装甲の耐熱限界時間にもよるが、一般に10秒程度の持続噴射が可能であり、これにより短時間ながら「飛行」することもできる。ブースターパックやシーガルカイト等、当時個人携行が可能なまでに小型化されていた燃料式飛行ユニットの技術をもってすれば、場合によっては重量数百kgにも及ぶASをも宙に浮かせることができたのである。このキックモーターによりASの行動範囲・環境は歩兵とほぼ変わらないものとなっているが、同時に一つの弱点も生んでいる。ASの装備の中でキックモーターの燃料タンクが、唯一爆発の畏れがある部分となってしまったのだ。そのためキックモーターユニットには、緊急時にユニット全体を圧搾空気で吹き飛ばす安全装置が取り付けられる。
 頭部や装甲内各所に設けられたセンサー及び観測装置は多岐に渡る。望遠・広角レンズの切り替えが可能な光学カメラには赤外線及び光増幅による暗視装置・熱感知センサーなども取り付けられ、あらゆる状況下で視界を確保する。また、僚機が捉えた情報を共有することも可能であり、直接目視する以上の情報を手に入れることができると言って良いだろう。特に指揮官機として運用されるスーツは、戦闘に参加しているすべての僚機から送られてくる暗号化された情報を処理する装置が増設され、通信・管制機能を強化している。また、複数機の火器管制や、敵通信・電子装置の傍受撹乱も可能である。
 なお、身体動作以外の各操作は主として音声入力によって行われる。モニターの拡大、リアモニターの投影、レーダーによる索敵などを行うことができ、同時に声紋によるマスターパイロットの確認手段としても使われる。と、いうよりもパイロットに合わせて調整済みの音声識別装置では、よほど声質が似通っていない限り他者には扱えなくなる。同様に、体格の違う者同士でのスーツの共用は難しい。スーツには一応操縦系統のサイズ・アジャスティング機能がついているが、自動化すると兵士個人の「動きの癖」に追従することができなくなるため全てマニュアル操作である。そのためアジャストは非常に面倒で、教練用アスレチックコースを1周するごとに調整作業を行い、普通はこれを10回ほど繰り返す。

ASと装甲兵の対比
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