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アーマードスーツ その3 [博物館]

●現代におけるAS

地球人が持ち込んだ万能歩兵装備「AS」は、もはや廃れた兵器である。
 AS最大のネックは、エネルギーをバッテリーに頼らざるを得ないが為の稼働時間の短さと、それに伴う費用対効果の問題であった。確かにASを装備した歩兵は高い戦闘力を発揮するが、歩兵の機動力・防御力や攻撃力を増大するならIFV(歩兵戦闘車輌)を分隊毎に配備した方が遙かに安上がりだ。もちろんIFV等の車輌にはできない、ASならではの有用性というものもある。例えば、兵器としては「歩兵用個人装備」、つまり最小レベルのものでありながら防御力・機動力・汎用性に優れている点。敵兵器を撃破するのに大火力を使用するのではなく、翻弄し、肉薄し、パイロットや操縦系統等重要箇所のみを破壊して使用不能にする能力を持つ点(言うまでもなく、単に破壊するよりも経済的に優れている)。そのようにして大型兵器をダウンさせる力を持ちながら、歩兵同様占領地域の制圧任務にも充分使用に耐える点。それでいて管制システムについて高度な訓練を必要とせず、歩兵教練さえ受けた兵士ならばとりあえず不自由なく使用が可能である点等である。だからこそ地球圏では実用に耐えるものだったのだが、惑星Ziでは事情が違っていた。「ゾイド」の存在のためにである。
 高出力自家発電の可能な「ゾイド」に搭載できる火器は、ASを付けていることなど無関係に歩兵部隊を蹴散らせてしまう。中央大陸戦争初期の、サイバネティクス化不充分のゾイド相手であれば、AS装備歩兵でも集団戦法で追いつめる事ができたが、ゾイドの重装甲化が進んでくるとAS搭載火器では対処が難しくなっていった。武器に用いられるテクノロジーレベルは同じなのだから、ASでもゾイドに対してダメージを与えることはできる。しかしASでゾイドに戦力的に拮抗するにはそれなりの数が必要で、しかも、ゾイド1体の戦力に拮抗し得るASを揃えるよりも、同程度の戦力をもつゾイドを1体配備した方が遙かに安価であった。よって、ゾイドに遭遇した歩兵は、より機動力(速度)に優れた装甲車に乗って早々に戦場を離脱し、対抗戦力としてゾイドを投入させるべきものとされたのだ。
 ASは斯くなる理由で、惑星Ziに登場した当初から芳しい活躍の場を与えられず、重装甲ゾイドの登場以降徐々に衰退していった。特殊部隊用超小型戦闘ゾイド(コマンドゾイドや24ゾイド)開発後にはほぼ戦場から姿を消し、現在では、一部の特殊部隊に配備されているものと、ASの源流たる介護用や作業用パワードスーツとして用いられているもの(厳密にはASとは呼べないが)を除いて、ほとんど存在していない。24部隊等で用いられる特殊戦闘服も、環境適合性を高めはするが、ASとは根本的に違うものである。そのような意味では、ASに用いられたパワーアシスト技術は、平和的目的のために構想された後、血腥い戦争用技術として高度発展を遂げ、また市民達の手元に還ってきたと言えるだろう。かつて宇宙旅行の夢を叶えるために登場し、ドイツ軍のV-2ミサイルとして実用化したロケット技術や、ジェット機がそうだったように、
 しかし、ASを初めとする地球式ロボット工学に用いられていた「サイバネティクス技術の源流」とも呼べるアクチュエーター等の動力伝達系技術そのものはゾイド改造にも受け継がれ、その後も発展を続ける。そしてその成果は、ゾイド生命体を搭載した歩兵ゾイド「ゴーレム」として結実した。ゴーレムは「ゾイド」でありながら、上記したASの特性の多くを踏襲した存在であった。ASは惑星Ziに適応した形へと生まれ変わり、再び陽の目を見たと言えるだろう。

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ゾイダーマン

前ホムペファンです。
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by ゾイダーマン (2015-03-31 21:46) 

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