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24の謎 [博物館]

1,「24」?

 「24ゾイドとは何か」、と問われれば、大抵の戦史マニアは「ゴーレム」や「デスピオン」、「メガトプロス」といったゾイドを思い浮かべることができる。だが、「何故その名で呼ばれるのか」について正しく答えられる者はいない。何故なら、その由来がはっきりしないからである。
 「ツーフォー(24)ゾイド」という呼称は、もちろんコードネームである。少年達に親しまれた模型のサイズが1/24スケールであったのは有名だが、惑星Ziにおいては当然「24」という名称が先に存在したのであって、決して玩具から生まれた名称ではない。呼び名だけは広く認知されている。なのに、その意味を知る者は恐らく存在しない。そんな戦史上のミステリーが、「24ゾイド」という名称である。


2,24ゾイド登場の歴史

 古来、ゾイドが勝敗を決する戦場において、ゾイドのパイロットは「ライダー(騎士)」と呼ばれ、尊敬された。地球人が戦闘ゾイドを量産し、大規模戦闘が行われるようになってからもそれは同様であった。しかしその裏に、かつて尊敬を集めたが、後にその数を減らし、後継者の不足に悩むこととなった職業がある。「ハンター(狩人)」である。
 「ゾイド狩り」は、かつての惑星Ziにおいて、使役するべき野生ゾイドを捕獲する生業として、「ゾイド乗り」よりも希少で、社会的に重要な地位を得ていた。野生ゾイドを捕獲するためのテリトリー「タイガーゲージ(火族)」や「メタロゲージ(風族)」「メトロゲージ(地底族の一部)」を始めとする群生地は、彼ら「ハンター」の縄張りであった。彼らの狩りの技術は口伝でのみ伝えられ、初めは家畜ゾイドの捕獲からその道に入り、一人前になるに従って、ドラゴンホース等の戦闘用ゾイドへと捕獲対象を移していった。大型ゾイド等は、ハンターが個人で捕獲できる存在ではなく、必ず集団で捕獲に当たった。ハンターの村から発見された古い文献の記録によると、小型ゾイドレベルでも一族総出、中型ゾイドなら集落総出、大型ゾイドは「組合」総出で捕獲を行ったという。
 彼らハンターは、地球人がもたらしたゾイド培養技術の進歩によって、必要とされなくなっていった。生き残りのために、彼らは野生ゾイド狩りの技術を生かし、軍隊内で特殊な任務に就いた。「ゾイド対ゾイド」の戦闘で敵ゾイドを倒すのでなく、ゾイドの弱点を巧みに突き、「ゾイド対人間」の戦いで敵ゾイドを活動不能に陥れる特殊兵科「機獣猟兵」の誕生である。
 機獣猟兵は、時に戦闘工作・移動手段として、アーマードスーツやビークル(乗用機械)と共に超小型ゾイドを用いた。機獣猟兵を始めとする特殊作戦コマンド兵には、整備・補給部隊の存在を前提とした大型兵器より、兵士個人レベルでメンテナンスの行える装備が望まれたためである。超小型ゾイドを、「コマンドゾイド」と呼ぶのはそのためで、今でこそ機械化歩兵全般の装備となっているが、かつては捜索・偵察・戦闘工作・破壊工作といった特殊兵科での需要に供するために作られていた。(なお、「アタックゾイド」と呼ばれていた時期もあるが、これは「歩兵用対ゾイド攻撃ゾイド=Anti-zoid Attack Zoid for Infantry」の分かりにくい略称のようである。)特に有名なヘリック共和国の「ブルーパイレーツ」は、「海賊団」の名を冠している通り無頼揃いで、風族ハンターの罠や集団戦法を駆使してレッドホーン等の大型ゾイドをも手玉に取った。伝統技術重視の姿勢からか非常にプライドが高く、上官といえども尊敬できなければ従わない職人気質が滲み出た部隊だった。逆に、気質の合う者は喜んで迎え入れ、自分たちの技術を喜んで伝えたという。部隊外部から受け入れられた者の多くは、原隊では鼻つまみ者であったという事実は、同部隊の活躍を描いた少年向け漫画『無敵のブルーパイレーツ』でも知られるところである。
 これら超小型ゾイドは、整備に特殊な機材を必要とせず、レーダー等の捕捉を受けづらい上、コストも低い。これを運用する特殊コマンド兵の能力の高さと相俟って、優れたコストパフォーマンスを発揮した兵器であった。その戦果は、後に特殊部隊用高性能ゾイド「24ゾイド」の開発を促したと言われている。

3,「24」に関する諸説

 さあ、ここでついに表題である「24ゾイド」が登場する。
 ゼネバス帝国における最強の特殊作戦コマンド・仮面騎士団こと「スケルトン」が用いた超小型ゾイドが、歴史に登場した最初の「24ゾイド」である。(※ただし、戦線での使用に関しては、「スケルトン」発足前に実験的に行われていた記録がある。)
 「スケルトン」の用いる超小型ゾイドは、白い電波吸収素材で機体を覆い、神出鬼没のゲリラ戦・破壊工作を行った。首都が「白い街(大理石の街)」と呼ばれたゼネバス帝国において、究極の存在は「白」く塗られていることが多かった。「白い巨峰」カーリー・クラウツのアイアンコング然り、皇帝親衛隊のレッドホーン然り。ヘリック共和国への逆襲の一手であったゼネバス帝国究極のゾイド「デスザウラー」。その作戦行動支援部隊「スケルトン」で運用されるべく生み出された超小型ゾイド群もまた、「究極」への願いを込めて生み出された。
 「24」のコードネーム決定に関するエピソードには、複数の説がある。そのうちの一つに、この「究極」というキーワードに符合する説がある。金の純度をKの単位(Karat)で表した時、純金を表すのは「24」であるため、究極の部隊としてもっとも純粋な「24」を冠したとする説である。なお、ゾイド文字の「シロ」を崩して「24」と読ませたとする説もある。 

 第二の説として紹介したいのは、回復されたゼネバス帝国領内においてZAC2041年以降に貼りだされたポスターの文言を由来とする説である。デスザウラーを主力に据えた反攻作戦はバレシア湾上陸作戦(D-Day)から共和国首都攻略までの一連の流れを計画したものであったとされる。暗黒大陸において練られたその作戦は、周知のとおり成功を収め、ヘリック共和国首都は一度陥落することとなった。
 この反攻作戦のため元帝国領に貼りだされたポスターがあった。デスピオンやドントレス、ロードスキッパーに跨る装甲兵らを背景にしたポスターである。そこに英語で書かれたキャッチコピーが、「To return For the Empire(目指せ凱旋、帝国のために)」であった。「To」が「2」になり、「For」が「4」になったとされる。つまり、「24」の名は、ポスターを見た帝国民の内から自然発生的に生まれたというのだ。面白いことに,共和国においても反攻作戦時に「To Go For Broke!!(全てを賭ける!!)」の文言でプロパガンダが行われており、これも共和国24ゾイド配備時期と符合している。偶然の一致なのか、共和国の対抗心なのか。他説として、「Report to the police for spy」というのもあるが、こちらは「スパイ・コマンドを発見した場合に秘密警察に通報することを促すポスター」が元となっているようだ。

 第三に紹介するのは、開発思想の数字にまつわるものだ。新たに開発する超小型ゾイドに、当時の帝国科学技術者が求めていたものは、「疲弊しつつある状況の中でも生産可能で、なおかつ従来のゾイドを凌ぐゾイド」であった。何しろ、ドン・ホバート博士が開発した超大型ゾイド・デスザウラーには莫大な予算がつけられた。それに加えて、サポート用とは言え、新規大型ゾイドを新開発する余裕は、当時の帝国には無かったのである。
 そこで生まれた設計思想が、「コマンドゾイドのサイズで大型ゾイド1体に匹敵する価値を、そして従来の3倍の生産を」であった。代表的なコマンドゾイドとしてシルバーコングを同種の大型ゾイド・アイアンコングと比較してみると分かるが、コマンドゾイドのサイズ(全高)は、大型ゾイドの1/8程度であった。この大きさの機体に対し、従来の3倍相当数の生産ラインを確保する。そのために、同サイズのあらゆるゾイドを凌駕する性能を目指して、限られた施設で技術の粋を凝らした。事実、この時期以降の帝国ゾイドは、「恐竜的進化(巨大化)からの脱却」を目指したものが多い。24ゾイドはこの要請に「細部に凝らした技術の結晶」という形で答えようとしたのである。
 この設計思想の推進者が唱えた参謀の売り文句が、「もしこれが達成できれば、コストパフォーマンスは8倍、数は3倍。つまり、24倍の戦力となります。」であったという。

 最後に紹介するのが、先述の「ハンター」の知恵に基づく説である。ハンターがゾイドを発見した際に、腕を伸ばして掌をかざし、どの部分の長さに近いかでゾイドとの距離を測る技術がある。例えば、ガリウスが親指で隠れたら○○m、ゴジュラスが親指と人差し指を開いた長さだったら○○m、といったような、簡易測量である。
 実は、上記の測量では、どちらも相手までの距離は約70mとなる。このことから、地球人来訪以前のゾイドの代表格であったこれらのゾイドを、かつてハンター達は「セブンツー(72)」と呼んでいたという。その後、ハンターらは、同規格のゾイド全てをこの呼称で呼んだ。
 そして彼らの語り草の一つに、こんなエピソードがある。ある地球人の武器商人が、「攻撃3倍の法則」について語った。「戦闘において有効な攻撃を行うには、相手の3倍の兵力が必要となる」というものである。その時、それを聞いていた老練のハンターが冗談っぽく返した。「俺たちなら、3分の1で足りるよ。俺たち自身が3倍みたいなもんだから。」この逸話から、「セブンツー」の「3分の1」で「ツーフォー」という名称が生まれたのだと言う。

4,埋もれてしまった謎

 24ゾイドの名称に関する謎は、今日では解き明かされることのない謎となってしまった。研究者がどこを当たっても、今では「24に由来する玩具のスケール」という事実を発見するのみである。今回紹介した説も、確たる証拠のある学説ではなく、都市伝説的なもの、または後付けのこじつけに当たるものだと筆者は解釈している。優秀且つ有名な「24ゾイド」の名でさえ、貴重な資料や証言を散逸してしまう「戦争」という名の病の前では、風に吹かれて飛ぶ砂塵に過ぎない。


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